日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
症例報告
門脈を貫通した千枚通しによる腹部刺創の1例
秋山 真之金谷 貴大重田 健太瀧口 徹石木 義人萩原 純石井 浩統恩田 秀賢増野 智彦小笠原 智子金 史英新井 正徳辻井 厚子横田 裕行
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2018 年 39 巻 2 号 p. 258-261

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抄録

70代の女性。自殺企図で約20cmの千枚通しで自身の腹部を刺し体動困難となった。7時間後に千枚通しが刺さったまま当院に搬送となった。CTでは成傷器の周囲に少量の血腫を認めたが, 明らかなextravasationは認めなかった。成傷器が胃を貫通していることは断定できたが, 血管損傷はアーチファクトで判断が困難であった。成傷器除去と臓器損傷の確認・修復のため緊急手術となった。千枚通しは幽門輪の口側の胃を貫通し膵頭部下縁の後腹膜を通り下大静脈と腹部大動脈の間を貫き椎骨で止まっていた。胃部分切除を行い, 成傷器を抜去したが門脈を貫いていたため門脈・脾静脈・下腸間膜静脈・上腸間膜静脈をクランプし修復した。合併症なく経過し, 術後20日で退院となった。刺創では成傷器は抜去しないことがスタンダードとされているが, 今回抜去されずに搬送されたため, 門脈貫通部からの出血がなく救命し得た腹部刺創の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。

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