日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
症例報告
上前腸骨棘部剝離骨折の1例
堀田 悠人伊藤 敏孝杉村 真美子金澤 将志今村 友典中野 貴明竹本 正明
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2018 年 39 巻 2 号 p. 255-257

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抄録

【症例】14歳男性。【主訴】左下腹部痛。【現病歴】2週間前より左下腹部痛があった。中学校の体育の授業でリレーの練習中に走っていたところ, 左下腹部に激痛が出現し, 痛みによる体動困難のため救急要請となった。【来院後経過】左下腹部の圧痛, 左股関節動作時の痛みを認めた。CT画像では, 上前腸骨棘に剝離骨折を認め, 体動困難であったため, ベッド上安静とし数日経過後退院となった。【考察】腸骨の剝離骨折は, 運動時の付着筋の収縮による牽引が原因となって生じる。好発年齢は, 骨の成長期にあり腸骨稜に骨端線が存在する10代であり, 骨端線部の牽引に対する脆弱性がその原因である。剝離骨折部位の痛みは強く, 身体所見からは疼痛部位の同定が困難であり, 内科的疾患との判別に難渋することがあると考えられた。そのため, 運動後の下腹部痛では腸骨の剝離骨折を念頭に置いて, 診察およびCT読影を行うことが重要であるといえる。

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