2022 年 39 巻 p. 41-52
多文化共生社会とは、異なる文化や価値観を持つもの同士が、違いを認め合いながら共に暮らしていくことである。本研究では、ボランタリズムの歴史的思想的背景を再検証することを通して、多文化共生社会の課題(違いを認め合うにはどうすれば良いか、共に関わり合うことは可能か)について考察することを目的とした。従来のボランタリズム研究ではあまり重視されてこなかった、「非権力性」「主体性」の側面について、ヨーロッパのボランタリズムの思想的背景を紐解きながら確認した。「自分の権利や自由を大事にすることと同じように、相手の権利や自由を尊重する」という、相互の主体性を尊重する姿勢が「違いを認め合う」上での出発点になること、既存の価値観や権力構造とは離れた立場で関わる「非権力性」の視点が、両者をつなぐ媒介機能を果たす可能性が在ることを指摘した。また、多文化共生を推進する方法論としての福祉教育・ボランティア学習実践についても、ボランタリズムの観点から、福祉教育・ボランティア学習の価値について再検討する必要性について検討した。