生命倫理
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iPS細胞由来の生殖細胞作成とARTへの利用における倫理的問題
遠矢 和希
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2011 年 21 巻 1 号 p. 69-75

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抄録

iPS細胞による生殖細胞の作成と利用は、配偶子不全等による不妊患者が血縁のある子を得る可能性につながる。生殖細胞に分化しうる人工細胞は数種あるが、直接的にART利用可能性があるのはiPS細胞である。生殖細胞の作成は議論が必要とする見解がある一方、日本では不妊患者の要求があるという意見がある。文部科学省は2010年5月にiPS細胞から生殖細胞の作成を認める指針を出したが、ヒト胚の作成は禁止した。多くの先進国も同様で、規制には様々な段階がありうる。iPS細胞由来の生殖細胞の研究においては、機能の検証等で受精卵の作成と滅失が避けられず、iPS細胞由来のヒト受精卵は提供受精卵と異なるかという倫理的問題等がある。臨床利用段階では、iPS細胞由来生殖細胞を使った生殖技術利用の拡大などが指摘されている。倫理的問題は決して少なくなく、次世代や社会への影響も鑑み、議論を続けるべきである。

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2011 日本生命倫理学会
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