世界初の子宮移植による生児の誕生がスウェーデンで2014年に報告されて以来、子宮性不妊(UFI) の女性が自らの子を得る方法として、子宮移植の臨床応用の機運が高まり、日本国内でも臨床研究へ向けた準備が進行している。子宮移植は生殖補助医療を目的に臓器移植の手段を用いる新たな医療であり、両医療における既存の倫理的正当化や規制枠組みに当てはまらないことが考えられる。本稿は、子宮移植に伴う倫理的問題として、①臓器移植医療としての正当化及び実施可能性の検討、②生殖補助医療として他の代替手段である代理懐胎との比較検討、③生まれてくる子の福祉の検討を行ったうえで、国内で臨床応用する場合の問題点と将来的な代替手段として人工子宮の可能性を考察した。子宮移植の臨床応用前にこれらの問題について十分に検討し、UFI女性、子宮のドナー、生まれてくる子が、医学的のみならず社会的不利益を被らないようにしなければならない。