2022 年 32 巻 1 号 p. 39-48
震災、水害、感染症パンデミックをはじめとする大規模災害が発生した際には、被災者の健康状態等の把握や必要な治療・支援・公衆衛生施策の検討に役立つ医学系調査研究の速やかな開始が時に重要となる。ヘルシンキ宣言をはじめ、研究倫理に関する一般的な国際ルールでは、医学系調査研究を開始するにあたっては、研究開始の前に研究倫理審査委員会による審査を受け、実施の承認を予め得る必要がある。しかし、この従来方式の審査では、災害時の早期からの研究開始が一律困難となるため、近年、従来とは異なる倫理審査の形につ いて幾つかの提案がなされている。本論では、2011年以降の10年間に日本で類似の大規模災害を複数経験した東北地方及び熊本県の基幹大学(病院を含む)2 施設を対象に、災害直後から第5 か月末までに倫理審査に 申請された実際の研究課題を調査し、得られた調査データと先行研究での諸知見・提案を踏まえたうえで、災害後の早期フェーズに備えた研究倫理審査システムの在り方について検討・提案する。