2014 年 10 巻 1 号 p. 28-40
本研究は,心臓移植の橋渡しの治療として不可欠な補助人工心臓(以下,VAD)を装着し生きる患者の体験を明らかにすることを目的とした.心臓移植の橋渡しとしてVADを装着した男性患者6名を対象とし,半構造的面接を行った.得られたデータは現象学アプローチを参考に分析した.対象者は植込型VAD装着患者が5名,体外式VAD装着患者が1名であった.VAD装着期間は平均1000日を越えていた.本質的要素は33抽出された.対象者はVADと共に生きることのポジティブな側面とネガティブな側面を比較し,現在の生活に向き合っていた.そしてVADと心臓移植のどちらを選択し未来を生きるか苦悩していた.植込型VAD装着患者の中には心臓移植を今すぐには望まない者がいた.また全ての対象者は自分の持つ強み(strength)を認識することで,その強みを活力にして生きていた.価値観やQOLは,VAD装着以前は生命の質,VAD装着後には生活の質,未来を見据えると人生の質へと目を向ける状況が変化していた.VAD装着患者の変化する価値観やQOLを理解し関わる必要がある.