日本クリティカルケア看護学会誌
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10 巻, 1 号
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第9回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 会長講演
第9回日本クリティカルケア看護学会学術集会報告 教育講演
総説
  • 江口 秀子, 明石 惠子
    2014 年10 巻1 号 p. 18-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,文献レビューを通してクリティカルケア看護領域における「臨床判断」の特徴を明らかにすることである.医学中央雑誌WEB版を用い「臨床判断」に関する国内の文献を検索した結果,クリティカルケア看護領域での臨床判断に関する研究は2005年以降からみられ,2012年4月までに発表された8文献を分析対象とした.結果,《見通しを立てる局面》《見通しを確定し,ケアを選択する局面》《ケアを実施しながら判断する局面》《振り返り,経験の蓄えとする局面》の4つの局面が見出された.さらに臨床判断を構成する要素は,①臨床判断の内容,②臨床判断に用いる情報・手がかり,③臨床判断に影響を及ぼす要因に分類された.そして,クリティカルケア看護領域の臨床判断の特徴は,疾患や生体情報,患者の症状とその経時的変化という客観的情報が重要視されていることと,過去の類似した事例の経験の有無が臨床判断に影響を及ぼしていることであった.
原著
  • 山中 源治, 井上 智子
    2014 年10 巻1 号 p. 28-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    本研究は,心臓移植の橋渡しの治療として不可欠な補助人工心臓(以下,VAD)を装着し生きる患者の体験を明らかにすることを目的とした.心臓移植の橋渡しとしてVADを装着した男性患者6名を対象とし,半構造的面接を行った.得られたデータは現象学アプローチを参考に分析した.対象者は植込型VAD装着患者が5名,体外式VAD装着患者が1名であった.VAD装着期間は平均1000日を越えていた.本質的要素は33抽出された.対象者はVADと共に生きることのポジティブな側面とネガティブな側面を比較し,現在の生活に向き合っていた.そしてVADと心臓移植のどちらを選択し未来を生きるか苦悩していた.植込型VAD装着患者の中には心臓移植を今すぐには望まない者がいた.また全ての対象者は自分の持つ強み(strength)を認識することで,その強みを活力にして生きていた.価値観やQOLは,VAD装着以前は生命の質,VAD装着後には生活の質,未来を見据えると人生の質へと目を向ける状況が変化していた.VAD装着患者の変化する価値観やQOLを理解し関わる必要がある.
研究報告
  • 小林 礼実, 下平 唯子
    2014 年10 巻1 号 p. 41-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    【目的】心臓手術を受けた患者の回復意欲の構造を明らかにし、回復意欲を支える看護援助の示唆を得る。
    【方法】心臓手術を受けた患者9名を対象に参加観察、半構成的面接を行った。分析はグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に行った。
    【結果】心臓手術を受けた患者の回復意欲の構造は、≪自分らしく生きる≫を中軸に<生の危うさから生きるための挑戦>を基盤として、<回復への自発的な対処>を経て、<生の獲得による健康の維持に向けた生活を見直す意識>へ発展するひとつの過程であった。そして<いたわり合う家族>と<最善を尽くす医療者>の支持によって、回復意欲は強化することが明らかとなった。さらに患者は<回復への自発的な対処>を通して回復意欲を高めていた。
    【結論】回復に向けた自発的な対処を促すためには、手術後の予測やイメージにつながる情報提供、身体的な苦痛の緩和、そして看護師が側にいる安心感を得る援助を提供する必要性が示唆された。
  • -ICUおよび外科病棟の入院患者における術後せん妄の発症状況および看護ケアの実態-
    佐々木 吉子, 林 みよ子, 江川 幸二, 古賀 雄二, 加藤 英理子, 木下 佳子, 宇都宮 明美, 大西 純子, 黒田 裕子
    2014 年10 巻1 号 p. 51-62
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    術後せん妄は,術後に生じる一過性の認知の変化を伴う意識の障害である.発症した場合,患者のQOLのみならず,医療経済にも負の影響をもたらすため,せん妄リスクをコントロールし,早期に発見し,適切なケアを行うことが重要である.しかし,現在日本のICUや外科病棟には,術後せん妄ケアの標準ガイドラインはなく,これらにおける全国的な術後せん妄の発症状況や,各施設におけるガイドライン整備を含むケアの実態は明らかになっていない.そこで,標準術後せん妄ケアガイドラインの作成に向けて,今回,ICUおよび外科病棟の入院患者における術後せん妄の発症状況とケアの実態を明らかにし,現状の課題や標準ガイドラインに必要な内容を検討することを目的として調査を行った.方法は,独自に作成した調査票を全国200施設のICUおよび外科病棟の看護管理者に配付した.結果,回答者103名の所属する部署の1ヶ月間の術後せん妄発症率は術後患者の9.1%で,このうちの68.1%にインシデントが発生していた.ガイドライン等が整備されている部署は1割程度で,あっても内容が不十分であることや,看護師が評価やケアを行うことに負担を感じていることがわかった.標準術後せん妄ガイドラインには,せん妄やそれによって生じる事象の定義の説明,リスク因子,信頼性の高い評価スケールの提示と選択方法,せん妄発症時の具体的ケア方法,薬剤に関する知識等の必要性が示唆された.
実践報告
  • 歳森 千明, 勝木 純子
    2014 年10 巻1 号 p. 63-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/11
    ジャーナル フリー
    A病院ICUでは,緊急入室した患者・家族の心理社会的支援に関する情報収集の手助けとしてAguileraの枠組みを参考に「危機リスク評価シート」を作成した.本研究は,シート使用開始から約1年が経過し,シート記載内容を後方視的に検討することで,A病院ICUにおける緊急入室した患者家族の心理社会的支援に関する情報収集での課題を明らかにすることを目的とした.
    シートを用いた情報収集では評価対象者を特定するようにしていたが,実際は評価対象者不特定のものが全体の約1/3を占めており,対象者の焦点化が不十分であった.不足情報として挙がった内容には,「病状理解」「サポート体制」「対処規制」の3領域で計19項目のカテゴリーがあり,すべての領域で再カンファレンスまでに追加情報が得られていないカテゴリーが存在していた.それらの情報は意図的に収集しなければ得られない事柄が多く,看護師のコミュニケーション能力の不足が考えられた.以上より,A病院ICU看護師の,患者・家族の心理社会的支援に関する情報収集において,対象の焦点化不足およびコミュニケーションに課題のある事がわかった.
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