抄録
救急外来における2事例の患者の家族援助の実際と家族援助に対する家族と看護師それぞれの認識をもとに,患者の家族の特性・看護師の能力・システムの関係を明らかにすることを目的とした.診療場面での参加観察とインタビューによってデータを収集し,家族の特性・看護師の能力・システムそれぞれの関係と,家族援助に対する家族と看護師それぞれの認識を分析した.その結果,家族の特性に応じて,看護師は【臨床判断】【臨床探求】【ケアリング】という3つの能力を発揮しており,家族と看護師にとって満足のできる家族援助となっていた.診療が停滞すると,看護師は【代弁者・道徳的主体者】の能力を用いて,医師に現状を改善するように働きかけていたが,次第に看護師も家族と関わらなくなり,家族と看護師にとって不満の残る家族援助となっていた.看護師は,患者や家族の特性だけでなくシステムの状況を把握し,限られた時間内で実践すべき家族援助を判断しながら適切に能力を発揮することが大切である.