2020 年 16 巻 p. 94-103
本研究の目的は,ICUに入室した後期高齢者の入室中の体験を記述することで,看護支援の示唆を得ることである.13名に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach;M-GTA)を基に質的記述的に分析した.
ICU入室中の体験は11カテゴリーが生成され,【現実世界への帰還】から始まり,【生きている実感】【非現実的なところに救いを求める】【命の危険が大きな場所】【現実感覚のつかめない時間】があった.麻酔の覚醒とともに【看護による心身の救済】を感じ,安心感から【手探りの対処】【予測して対処】を行い,【ICU社会への関心の広がり】【人生の振り返り】と広がっていった.これらを支えていたのは,【どのような状況になろうともなるようになる】という生き方であった.
非現実的な語りがあるものの恐怖体験はなく,抑うつや不安を示すような語りはみられなかった.後期高齢者が半覚醒のときから安心が得られ,【予測して対処】することが促進できるよう援助していく必要がある.