日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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原著論文
シンプルでチェアータイムが短いシーラントの術式
英保 裕和
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2011 年 31 巻 1-2 号 p. 21-27

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抄録

シーラントは齲蝕予防に有益である.シーラントの保持や封鎖を確実にして長期的に安定した予後を得るためには,防湿と裂溝の清掃を確実に行うことが肝要である.推奨される防湿と裂溝の清掃として,<ラバーダム装着→ブラシによる機械的清掃→超音波洗浄→次亜塩素酸ナトリウムと探針による化学的清掃>という一例があげられる.
この術式は理想的ではあるが複雑で時間がかかり,小児患者には負担が大きい.そこでわれわれは,シンプルでチェアータイムが短く,長期的に安定した予後が得られるシーラントの術式の確立を試みた.
まず,防湿装置としては多機能バキュームチップZOO(APT)を採用した.本装置は①歯の萠出状態に関係なく使用できる,②短時間で装着できる,③高い防湿効果がある,という特徴がある.裂溝の清掃には機械的清掃と超音波洗浄を省略して,10%次亜塩素酸ナトリウムゲル(AD ゲル,クラレ)と先端の鋭利な#3A の探針によるスクラッチングの併用のみを採用した.なお,本法で裂溝が充分に清掃に有効されるかを確認するため,歯垢染色した下顎大臼歯30歯において評価した.その結果,1分間のAD ゲル処理で平滑面のプラークはほぼ完全に溶解され,小窩裂溝深部のプラークは#3A の探針によるスクラッチングの併用が有効であることがわかった.エッチング剤・シーラント材料は共に小窩裂溝深部にまで到達できる流動性の高い製品を選択した(表面処理液レッド,サンメディカル, コンシール F, SDI).
本術式にて下顎大臼歯にシーラントを行った症例を示す.本症例は7年経過後もシーラントの破折,脱離を認めず,齲蝕の発生もなく経過良好であった.

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© 2011 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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