日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
Online ISSN : 1884-8230
Print ISSN : 1346-8111
ISSN-L : 1346-8111
症例報告
エネルギーを本格的に導入した「顔と口腔の医学」の樹立
Part Ⅰ(前編)人工歯根療法時代の到来─人工歯根療法の基礎研究
西原 克成手嶋 通雄
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 31 巻 1-2 号 p. 42-57

詳細
抄録

人間の生命を扱う医学と生命科学で最も重要な考えは,ミトコンドリアのエネルギー代謝と環境エネルギーと動物自身の動きの生体力学エネルギーであるが,このエネルギーの概念が今日完璧に見過ごされている.筆者は医学・生命科学にこれらの考えを導入して新しいエネルギーに立脚した「顔と口腔の医学」をまとめ,出版した.本稿では人工歯根療法について述べる.エネルギーを導入した新しい医学の考えに立って筆者は,骨癒着型のインプラントに代わって新型の歯根膜(歯周線維組織)を持つ釘植型人工歯根を開発した.これまでのすべてのインプラントには歯周支持構造の固有歯槽骨・歯周靭帯線維関節が欠けていたので,歯を支える骨組織の改造システムがなかった.筆者は,生体力学の観点から,人工歯根の材料,形状,機能効果を研究し,セメント質・歯周靱帯線維関節・固有歯槽骨を機能下で発生させる特徴的波状形のアパタイト焼結体とチタンの人工歯根を開発した.これらの人工歯根を成犬と日本猿に植立して,基礎的動物実験を行った後に生体力学研究を行った.人工歯根植立術後に連続冠で固定し,直後から咀嚼させるのであるが,咀嚼運動エネルギーによって生ずるハイドロダイナミクスは流動電位を随伴して生じ,この電位によってセメントブラストと固有歯槽骨と歯周靱帯線維関節が毛細血管とともに誘導される.これらの光学顕微鏡とSEM(走査型電子顕微鏡)およびマイクロアナライザーによる病理組織学的研究につづいて有限要素解析FEA 法を用いて釘植型と骨癒着型の人工歯根の比較研究および人工歯根の形状効果および機能効果に関する研究を行った.

著者関連情報
© 2011 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top