抄録
咬合平面は補綴処置における咬合の再構成や評価に用いられるだけでなく,下顎の前後的位置と下顎の開大に大きく影響し,骨格パターンを決定する重要な要素の一つである.歯科矯正治療における咬合再構成において重要な咬合平面は上顎咬合平面(upper occlusal plane[UOP])で,これを評価,診断することが治療におけるキーポイントになる.今回提示する high angle class Ⅱ open bite 症例は,V 字型(フラットな上顎前方咬合平面と急峻な上顎後方咬合平面からなる)咬合平面と急峻な下顎下縁平面(mandibular plane)が特徴であり,臼歯部における咬合高径の不足が下顎を後方回転(時計回りに回転,開大)させ,オープンバイトを呈したものと考えられる.このような症例に対しては積極的に咬合平面の再構築にアプローチし,後退した下顎の前方への再適応を誘導することが重要である.今回,症例を通して治療ステップを報告させていただく.【顎咬合誌 33(1・2):53-64,2013】