抄録
第一大臼歯は食物粉砕の際,中心的な役割を担っているが,う蝕罹患率が高いなどの理由から喪失頻度が高く,しばしば下顎第一大臼歯中間欠損症例に遭遇する.そこで,本研究では,下顎第一大臼歯中間欠損歯列における咀嚼筋活動への影響を検討するために,完全歯列,片側および両側第一大臼歯欠損を模したスプリントを用いて,咀嚼開始から嚥下終了までの筋活動量の評価を行った.その結果,欠損歯数が増えるにつれて総筋活動量および咀嚼回数が増加する傾向を示した.しかし,1回の咀嚼ストロークに要する平均筋活動量は,スプリントのタイプによらずほぼ一定であった.結論として,第一大臼歯中間欠損は咀嚼回数の増加をもたらし,とりわけ両側第一大臼歯欠損歯列で総筋活動量に有意な影響を及ぼすことが示唆された.