目的:日々の臨床において,Lytle & Skurow の修復歯科学の分類を理解し,それぞれの患者がどの分類にあてはまるのかを判断することは重要である.今回歯科治療介入する際に治療咬合を付与する必要があると考えられた上記の分類Class III の1 症例を通し,留意する点を簡潔にまとめ,各ステップを再考したい.方法:患者の同意を得て,基礎資料収集を行い,問題点を抽出し診査・診断を行った後に立案した治療計画を患者に説明し,治療方針を決定した.全顎的な治療を開始し,最終補綴を行い,メインテナンスに移行するまでの流れを報告する.結果:現在臨床症状はなく,審美的・機能的にも患者の満足も得られた.術者側から診ても,生物学的にも,構造上も問題点は今のところ見られない.考察および結論:治療介入することによって改善できる問題点と,患者自身の抱える改善することのできない潜在的なリスク因子(悪習癖・過度な咬合力)もあることを術者,患者の双方が理解すべきである.各治療手順を一つひとつ丁寧に行うことで長期的に安定した治療咬合を付与することができると考えられる.