2019 年 39 巻 1-2 号 p. 28-34
埋伏した永久歯によって,その隣在歯に歯根吸収が起こることがある.このような異常吸収は上顎犬歯による中切歯,側切歯に対するものが圧倒的に多く,関連した報告も多数ある.一方,下顎第二大臼歯は埋伏の発症率自体が低いため,その隣在歯である第一大臼歯が歯根吸収を受ける例は稀である.今回,埋伏した下顎両側第二大臼歯により第一大臼歯が高度な歯根吸収を受けた叢生症例に対して,下顎両側第一大臼歯と上顎両側第一小臼歯を抜去し,全顎矯正治療にて咬合の改善を行う機会を得た.全顎矯正治療を選択できたことで,天然歯のみによる前歯のガイドと臼歯の咬頭嵌合が確立でき,咬合の安定につながっていると考えられる.今回の症例のように著明な歯根吸収があるにもかかわらず,痛みや不快感などの自覚症状がなく,歯の動揺もない場合,エックス線診査以外での発見は困難である.【顎咬合誌 39(1・2):28-34,2019】