日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
コンビネーションシンドローム患者に対して 咬合再構成治療を行った1 症例
石田 智毅関口 孝浩
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2019 年 39 巻 1-2 号 p. 21-27

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抄録

目的:上顎無歯顎で下顎両側性遊離端欠損の患者では,上顎骨前歯部の骨吸収,上顎結節の肥大,挺出,硬口蓋粘膜における乳頭状過形成,下顎前歯の挺出,下顎義歯床下の骨・顎堤の吸収を主症状とする症候群は,義歯の難症例であり,コンビネーションシンドロームと呼ばれている.この患者に対し,有床義歯補綴による咬合再建治療を行い,良好な結果が得られたので報告する.患者:82 歳,女性.主訴:上下の義歯がともに外れやすいことによる咀嚼障害.上顎総義歯,下顎両側性遊離端欠損部に部分床義歯を装着し,コンビネーションシンドロームを呈していた.義歯を修理してリップサポートの改善,咬合高径の回復,下顎補綴物の一体化を行ったところ,上下義歯が安定し主訴の改善傾向を認めた.力学的に上顎義歯が安定するよう咬合再構成治療を行った.考察:咬合力の入力方向を安定させるために下顎両側遊離端欠損部にリジッドサポートの概念に基づく義歯を用いたこと,上顎義歯の推進現象を極力抑えるような咬合平面を設定したこと,上顎義歯の転覆を防ぐために咬合様式としてバイラテラルオクルージョンを付与したことによって義歯の安定が図れ,咀嚼障害を改善することができたと考える.【顎咬合誌 39(1・2):21-27,2019

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© 2019 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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