2020 年 40 巻 1-2 号 p. 45-52
全顎にわたる補綴治療を行う場合,顔貌などから明らかな垂直顎間距離の短縮がない場合には,歯冠修復の便宜上の咬合挙上は,最少限にすべきだと考えられる.しかし,臨床歯冠長の短い場合には,咬合高径を温存するか,あるいは咬合を挙上するか,判断に苦しむことが多い.本症例(患者:58 歳,女性)は,大臼歯部の咬合支持をほぼ失っていたために全顎的な補綴処置で機能回復を計画したが,診断用ワックスアップにより咬合挙上の得失を慎重に検討し,歯冠長が短かかったにもかかわらず咬合高径を温存したまま全顎的な補綴処置を行った.その結果,歯質・歯髄の保存を重視した,ミニマムインターベンションの全顎的補綴治療を実現することができた. 【顎咬合誌 40(1・2):45-52,2020】