2021 年 41 巻 1-2 号 p. 80-90
広汎型重度慢性歯周炎を有する患者に,咀嚼機能を評価しながら,歯周治療,矯正治療,咬合治療などを併用した歯周矯正治療症例を報告する.本症例は,広汎型重度歯周炎やくいしばりにより2 1 の歯間離開と1 の突出が著しく,2 2が上顎の歯肉を嚙んでいた.全顎的に中程度から重度の歯槽骨吸収像を示し,歯列が近心傾斜して,歯肉の腫脹,出血や歯の動揺が認められた.咀嚼運動所見では咀嚼サイクルが約1 秒と非常に遅く,顎関節雑音,口がまっすぐ開かない等の顎関節症状を呈していた.その他,頭痛,難聴,肩こりなどの種々の不定愁訴も認められた.このような複雑な症例を呈する症例に歯周矯正治療により不正な歯列と咬合を再構築し,かつ良好な咀嚼を与え,クラウンブリッジによる咬合再構成を行った.本症例は初診時より14 年経過しており,歯周組織の再生が確認でき,顎関節と調和しながら,咬合,機能,審美が回復し,良好な経過が認められた.