日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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原著
口腔機能の簡易な評価法として有効な挺舌および臼歯部咬合関係の評価
安部 佐織川畑 仁克
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2022 年 41 巻 3 号 p. 217-222

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抄録

国の事業として「高齢者の低栄養防止や口腔,服薬,生活習慣病等に対する重症化予防等の推進」が導入されたが,寝たきり等の在宅の要介護者の中には通院による受診が困難で健診や指導を受けられない人がいる.そのため平成28 ~30 年度,岐阜市歯科医師会は委託を受けて在宅要介護者等への訪問歯科健診事業を実施した.今回健診で得られた知見について報告する.平成28 ~30 年の3 年間,岐阜市に居住する要介護3 ~5 の要介護高齢者のうち,申請があり,歯科治療や居宅療養管理指導を受けていない56 名に対して歯科医師と歯科衛生士が訪問歯科健診と歯科保健指導を行った.しかし,本事業の対象者が要介護度3以上であることから,意思疎通が困難なケースが散見された.健診内容には受診者へ指示が必要な項目もある.そこで今回,評価項目の中で最も有効なものを抽出するために,他の指標と最も多く相関するものを調査する.今回は健診項目の中の要介護度,現在歯数,臼歯部咬合関係,口腔機能評価5 項目において統計分析を行った.統計分析はスピアマンの順位相関係数を用い,統計学的水準5%とした. 健診結果のデータは匿名化された情報を用いた.今回の検診結果のデータを統計学的に分析したところ臼歯部咬合関係はせき払いとRSST に有意な相関を認めた.この結果より咬合関係の変化と咽頭筋群との間に関連があるのではないかと思われる.また挺舌は咀嚼筋触診,せき払い,空ブクブクうがい,RSST との間に有意な相関を認めた.このことから挺舌の診査は咀嚼筋,口輪筋及び咽頭筋群の口腔に関連した筋肉群の機能低下を推察する一つの指標となり得ることが示唆された.

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© 2022 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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