日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
咬合崩壊の患者に対し治療選択肢の 制約下で咬合再構成を行った1 症例
阿部 公人
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2023 年 43 巻 1 号 p. 22-

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抄録

多数のう蝕により咬合崩壊を起こした患者に対し,咬合再構成を行った症例について報告する.患者は,43 歳の男性で,全体的に治療して欲しいとの希望で来院した.診査の結果,上顎前歯部と下顎左側大臼歯部に残根を認め,左側大臼歯部の咬合支持と前歯部での適正なアンテリアガイダンスを喪失しており,咬合平面の乱れも認められた.診査診断をもとに,下顎左側の大臼歯部には自家歯牙移植術を行い,ブリッジによる補綴処置にて咬合支持を確立した.上顎前歯部は,歯肉縁下う蝕により生物学的幅径の侵襲が見られたため,プロビジョナルレストレーションを装着後,歯冠長延長術を行い,歯周組織,咬合の安定について再評価を行った上で最終補綴処置に移行した.治療選択肢に制約がある中で,安定した予後を見込める治療を行うことが出来た.ただし,高いう蝕リスクや移植歯の状況から,今後も注意深くメインテナンスを行っていく必要がある.【顎咬合誌 43(1):22-29,2023

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© 2023 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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