抄録
目的:メタルフリーレストレーションを実現させるための高強度コア材として,Y-TZP 系ジルコニアが日本に導入され20 年以上が経過した.さらに,近年,高透過性ジルコニアの開発により,フルカントゥアのジルコニアが臨床応用されている.しかし,ジルコニアは天然歯と比べて硬い材質であることから,対合歯の摩耗について懸念される.そこで,今回は,ジルコニアの研磨状態が対合歯摩耗へ及ぼす影響について検討した.材料と方法:【ジルコニア試料】直径3mm長さ6mm の円柱 Y-TZP ジルコニア(京セラ)【対合歯材料】エナメル質を想定した人工セラミックスとして,カーボネートアパタイト (C/P=1) を800℃で2 時間焼結した10mm × 10mm × 3mm の板上試料【ジルコニア表面研磨状態】条件①:耐水研磨紙#4000 研磨,条件②:①後,ビトリファイドダイヤ(松風)で切削,条件③:②後,ジルコシャイン(松風)で研磨,条件④:③後,ジルコンブライト(DVA)で研磨【対合摩耗試験】衝突回転摩耗試験(アラバマ方式:37℃水中浸漬,垂直荷重:75N,水平回転:30°,繰り返し回数:10,000 回)試料数は各条件5 ~ 6.【評価】試験後のジルコニア試料の自己摩耗量(減少量mm)および,対合摩耗量:最大摩耗深さRz(μm) を測定.条件①②③④それぞれの最大摩耗深さの平均値を分散分析後,Fisher の多重比較検定.結果と考察:対合摩耗深さは,条件①(2.27 ± 1.4μm)< 条件④(10.4 ± 1.9μm)< 条件③(11.8 ± 5.0μm)< 条件②(75.42 ± 42.9μm).条件②は,他のすべての条件に対し,有意(P< 0.05)に対合を摩耗させた.条件①③④間には有意差はなかった.ジルコニア自体はどの研磨状態のときも減少量は0.00mm.結論:切削したジルコニア表面を適切に研磨すれば,対合摩耗量は鏡面研磨した状態と変わらないことが分かった.