カウンセリング研究
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原著
喘息患者の自己管理不良に影響を及ぼす情動認知
―アレキシサイミアと共感性からの検討―
中島 園美
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2013 年 46 巻 2 号 p. 73-82

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抄録

心身症という病態をとりやすい疾患のひとつである気管支喘息の慢性難治化には,自己管理の不良が関係する。自己管理の不良には,実際よりも軽症とみなす自覚症状のギャップが大きく影響していると報告されている。そこで,本研究の目的は,自覚症状のギャップに結びつく心理的要因(自己と他者の情動認知)を明らかにすることとした。喘息患者41名を対象に,自己と他者の情動認知の指標と考えるアレキシサイミアと共感性,そして患者の主観的重症度を問う質問紙調査を行った。その結果,自覚症状のギャップは共感性の「視点取得」と正の関連がみられた。一方,アレキシサイミアの「感情伝達困難」と負の関連がみられ,自覚症状のギャップはアレキシサイミアの障害とは関連がないことが示された。本来,社会的望ましさと正の相関がある「視点取得」が,自己管理不良のプロセスに関与するリスク要因になりうることを示した。喘息患者の自己管理の不良は,これまでアレキシサイミアとの関連が数多く報告されてきたが,共感特性による影響も明らかになり,自己管理の不良を予防するために,自己と他者両面の情動認知への介入の重要性と,共感特性を考慮したプログラムを構築する必要性が示された。

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© 2013 日本カウンセリング学会
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