日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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最新号
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総説
  • 関野 愉
    2025 年45 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー
    歯の動揺は臨床で頻繁にみられる所見であり,不快感や咀嚼機能の障害を引き起こす要因となる.その主な原因は,歯周炎に伴う歯槽骨吸収や咬合性外傷,あるいは両者の併存である.本総説では,歯周疾患における歯の動揺の原因,評価法,治療の適応について,最新のエビデンスに基づき概説した.歯の動揺度は,治療後の臨床的アタッチメントレベル(CAL)や長期予後に影響する可能性があるが,多くの動揺歯は長期保存が可能であり,動揺の存在だけで抜歯を判断すべきではない.固定は機能的安定を得るための補助的手段として有効だが,歯周組織の治癒を直接促進するものではない.また,咬合性外傷が歯周炎の進行に与える影響については,動物実験では一定の関連が示唆されているが,ヒトでの因果関係は未解明である.診断は推定的所見に基づくことが多く,特に「進行性の動揺」は病的状態として慎重に評価する必要がある.本稿では,歯の動揺に関する基礎および臨床研究を踏まえ,その診断と治療の現状と課題を明らかにした.
原著
  • 羽田 詩子
    2025 年45 巻1 号 p. 5-10
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー
    目的:メタルフリーレストレーションを実現させるための高強度コア材として,Y-TZP 系ジルコニアが日本に導入され20 年以上が経過した.さらに,近年,高透過性ジルコニアの開発により,フルカントゥアのジルコニアが臨床応用されている.しかし,ジルコニアは天然歯と比べて硬い材質であることから,対合歯の摩耗について懸念される.そこで,今回は,ジルコニアの研磨状態が対合歯摩耗へ及ぼす影響について検討した.材料と方法:【ジルコニア試料】直径3mm長さ6mm の円柱 Y-TZP ジルコニア(京セラ)【対合歯材料】エナメル質を想定した人工セラミックスとして,カーボネートアパタイト (C/P=1) を800℃で2 時間焼結した10mm × 10mm × 3mm の板上試料【ジルコニア表面研磨状態】条件①:耐水研磨紙#4000 研磨,条件②:①後,ビトリファイドダイヤ(松風)で切削,条件③:②後,ジルコシャイン(松風)で研磨,条件④:③後,ジルコンブライト(DVA)で研磨【対合摩耗試験】衝突回転摩耗試験(アラバマ方式:37℃水中浸漬,垂直荷重:75N,水平回転:30°,繰り返し回数:10,000 回)試料数は各条件5 ~ 6.【評価】試験後のジルコニア試料の自己摩耗量(減少量mm)および,対合摩耗量:最大摩耗深さRz(μm) を測定.条件①②③④それぞれの最大摩耗深さの平均値を分散分析後,Fisher の多重比較検定.結果と考察:対合摩耗深さは,条件①(2.27 ± 1.4μm)< 条件④(10.4 ± 1.9μm)< 条件③(11.8 ± 5.0μm)< 条件②(75.42 ± 42.9μm).条件②は,他のすべての条件に対し,有意(P< 0.05)に対合を摩耗させた.条件①③④間には有意差はなかった.ジルコニア自体はどの研磨状態のときも減少量は0.00mm.結論:切削したジルコニア表面を適切に研磨すれば,対合摩耗量は鏡面研磨した状態と変わらないことが分かった.
  • 羽田 詩子
    2025 年45 巻1 号 p. 11-17
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー
    オールセラミックレストレーションは,優れた審美性を有する.オールセラミッククラウンを天然歯に模倣するためには,サイズ,形態,表面のテクスチャー,透明度および色調が重要である.オールセラミッククラウンの中でも二ケイ酸リチウムガラスセラミックは,IPS Empress 2(IVOCLAR VIVADENT)から e.max press および e.max CAD(IVOCLARVIVADENT)へと進化し,現在でも臨床において高く評価されている.フッ化水素酸処理は,ガラスセラミックスのボンディングを効果的に行うためには不可欠であり,審美修復の成功も,このフッ化水素酸とそれに続くシランを使用した確実なボンディングのステップがあるからであると考える.しかし,セラミックスの強さが材料表面の欠陥に支配されると考えれば,接着に不可欠なフッ化水素酸処理を施すことにより修復物の強さに影響を与えることは十分に考えられる.そこで今回は,酸処理時間が二ケイ酸リチウムコア材の表面性状と曲げ強さに与える影響について観察した.フッ化水素酸による酸処理は,接着に必要な時間の範囲内であれば二ケイ酸リチウムの強度に影響を与えないことが分かった.
  • 三輪 一雄
    2025 年45 巻1 号 p. 18-23
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー
    咬合診査を行う際の中心位(Centric Relation 以下CR)の採得には歴史的な背景から様々な変遷を繰り返してきたが,その確固たる形式は未だに定まっていないのが現状と思われる.またその方法にはいくつもの種類があり,採得方法がどのような状態や条件を伴った記録となって診断に反映するのかが未だ統一されてはいない.そのためにどうしても術者主体の見解となってしまうことも多いために患者側の理解や協力も得られにくく一方的な治療になってしまうことが危惧される.咬合の問題は精神的な影響や生活習慣など様々な障害因子を持っていることが報告され全身にも波及することが言われている.また患者の状況や理解度によっても治療方針が大きく左右されるために幅広い見解をもって細やかな情報収集が必要である.そのためには咬合診査を簡略化して日常的に行うことができるようにして問題点を抽出していきながら必要に応じて精密検査へと移行していくことが望ましいと考える.そして,顕在的なものだけでなく潜在的にも障害となる要因をクローズアップしていく中で患者の理解を段階的に引き上げ咬合との因果関係を体験的にも確認しながら進めていくことが大切である.その意味で私たちが日常行っている咬合診査をもっと多方面から検証していくことが必要となってくる.今回は当院で行っている咬合診査を下顎位の咬合採得を多種類の方法から併用して行うことでその意義や目的が異なることが分かってきたので報告する.
  • 矢野 圭介
    2025 年45 巻1 号 p. 24-28
    発行日: 2025/05/30
    公開日: 2025/06/14
    ジャーナル フリー
    顎関節内障とICP-RCP ディスクレパンシーの関連性を解明することを目的に研究を行った.MRI を撮影した71名(男性13 名:女性58 名)を対象に顎関節の正常群と顎関節円板転位群および下顎頭骨変化群の3 群に分類し,それぞれ咬頭嵌合位(ICP)から後方限界位(RCP)までの滑走量(ICP-RCP ディスクレパンシー)を比較検証した.その結果,正常群は平均0.09mm,円板転位群は0.96mm,下顎頭骨変化群は1.8mm であり,それぞれ有意差が認められた.片側群と両側群とでは有意差が得られなかったことから,円板転位や骨変化が片側だとしてもICPRCPディスクレパンシー量が増大する可能性が示唆された.joint effusion の有無に関しては有意差が認められず,咬合への影響は低いものと考えられた.以上のことから,顎関節内障はICP-RCP ディスクレパンシーをもたらし,病態の進行に伴いその量が増加することが示唆された.
症例報告
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