抄録
オッセオインテグレーションの概念に基づくインプラントが, 従来の欠損補綴に新たな局面をもたらした事は事実である.しかしながら, 高度に吸収した顎堤に対して, 機能面のみならず, 審美的観点をも考慮したインプラント補綴を行おうとした場合, 様々な問題を内包していると思われる.
すなわち, 重度の歯周炎により硬組織, 軟組織ともに大きなダメージを受け, 萎縮した部位にインプラントで再建を行おうとした場合, 骨移植で対応する方法, あるいはディストラクション (distraction osteogenesis) , GBR (Guided Bone Regeneration) 等を行う方法, さらには, サブストラクチャー (*) を用いる事によって失われた組織を改善するといった方法が考えられる.4) , 5)
本ケースはヒ顎の高度に退縮した無.歯顎堤に対して, 歯冠部と.歯肉部を独立させたサブストラクチャー (*) を用いて再建した症例である.
(*) サブストラクチャー
通常は, インプラントにアバットメントを接続し歯冠部をセメンティングあるいはスクリューで固定するが, 軟組織, 硬組織が大きく失われた場合においての中間構造物を指す, メタルフレーム上にピンクポーセレンで歯肉部を築盛し, 支台歯部はメタルフレーム上で支台歯形態を作製したものである.