抄録
音声知覚・産出の基盤となる音声表象の形成には、音声情報のみならず、文字情報も大きく影響する。そのため第二言語(L2)の発音指導において音声と文字の両者をどのように提示したら、学習者が正確なL2音韻表象を形成し、発音向上できるかを明らかにすることは意義がある。本研究では、音声提示された単語の即時復唱を繰り返す発音学習において、文字情報の提示がどのように学習効果に影響するかを検証した。分析対象は、成人の日本人英語学習者(初級・中級レベル)による英語シュワーの長さ(単語内の強母音長に対する弱母音、シュワーの長さの割合)の発音である。実験は「学習期」と 「テスト期」で構成された。「学習期」で学習者は、全単語の3/4を各8回即時復唱した。その際、文字の提示方法は3種類:1)全8回音声と同時提示、2)最後の1回のみ音声と同時提示、3)文字提示なし、であった。10分後の「テスト期」で学習者は、全単語を即時復唱し(Test 1)、その直後に、同じ単語を音読した(Test 2)。音声分析の結果、学習中、常に音声と文字を同時提示した場合には、即時復唱のTest 1では学習効果が確認されなかったが、音読のTest 2では効果がみられた。また、先に音声を集中して提示後、最後の1回のみ文字を提示した場合は、前述の結果とは逆で、Test 1では学習効果が得られたがTest2では効果がなかった。即時復唱の反復による発音学習の効果について、「学習条件(文字の提示時期・提示量)」と「テスト条件(即時復唱・音読)」の関係に焦点をあてて議論する。