2009 年 11 巻 2 号 p. 46-51
本研究の目的は,小規模事業所の健康診断を推進する要因をソーシャル・キャピタルの観点から検討することである.方法は健康管理について,F市の小規模事業所を対象にしたアンケート調査(198事業所)の検討,および小規模事業所5社の健康管理担当者と保健サービス提供機関5社の責任者と保健師を対象に実施した半構造化面接の質的帰納的分析である.その結果,健康管理を推進する要因は,【担当者の健康管理への熱意】【健康管理に関する情報伝達】【質の保証された保健サービスの提供】【機関の資源を活かした支援】【信頼関係】の5要素が見出された.これらを機能させて事業所が健康診断を推進するためには,キーパーソンである担当者への健康啓発を図ること,他機関と協働・連携することで事業所へ効率的かつ効果的な産業保健サービスの提供を図ることが必要であった.そのためには,地域の健康管理関係機関同士の関係性を高め合える場や機会がもてる環境を整備する必要性が示唆された.