抄録
目的:都市部福祉事務所に生活保護相談員として単独配置された保健師の援助行為を調査し,公衆衛生看護としての機能を明らかにする.方法:都市部福祉事務所で生活保護相談を担当する保健師1名に,生活保護相談で保健師らしい援助ができた事例への援助内容,担当した生活保護相談以外の活動内容に関して半構成面接を行った.また,日常業務の参加観察や記録の閲覧等により面接調査内容を補った.調査内容から要保護者に対する援助行為と生活保護相談以外の援助行為を抽出し,質的帰納的に分類整理した.結果:保健師の援助行為は,「支援を通じ本人の地域生活を包括的に把握しニーズを見出す」「セルフケア能力の補完・向上と支援関係構築により健康状態悪化と生活困窮の悪循環を断ち切る」「健康状態急変時に関係者を巻き込んで対応する」「多職種との連携強化・開発」「予防的視点に立った支援システムの開発」「保健医療サービスの質改善」,に整理され,公衆衛生看護の機能を満たしていた.考察:近年拡大する健康格差の是正を図るために,生活保護相談において公衆衛生看護として次の機能が特に求められる.要保護者の生活を包括的に捉え,健康面の支援を通じて福祉職と要保護者の関係を強化する,福祉部門と保健部門の通訳・橋渡しをする,自治体全体を見据えて健康的な政策づくりを提言する,保健福祉医療の質改善を図る.強化すべき機能は,保健部門との連携や効果的な保健活動の検討がある.