日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
12 巻, 1 号
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  • 尾﨑 伊都子, 小西 美智子, 片倉 和子
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は壮年期男性勤労者の健康習慣(栄養バランス,身体活動,睡眠,節酒,禁煙)に関する自己効力感尺度を作成することである.方法:予備調査として勤労者を対象に行った保健指導に基づき,栄養バランス10項目,身体活動7項目,睡眠6項目,節酒8項目,禁煙8項目の尺度項目を作成した.本調査では作成した尺度項目を用いて勤労者1,000名を対象に自記式質問紙調査を行った.尺度の信頼性に関してCronbach α係数を算出,妥当性に関して生活習慣,主観的健康管理能力尺度との関連性を検討した.結果:953名を分析対象とし,因子分析の結果,栄養バランスは第1因子「食生活の管理」,第2因子「環境への対処」の2因子が抽出され,身体活動,睡眠,節酒,禁煙はいずれも1因子構造であった.尺度のα係数は,栄養バランス0.87,身体活動0.90,睡眠0.89,節酒0.92,禁煙0.94であった.自己効力感尺度と生活習慣との関連性を分析した結果,好ましい生活習慣を実施している者は,実施していない者に比べて尺度得点が有意に高かった.また,自己効力感尺度と主観的健康管理能力尺度との相関分析の結果,栄養バランス,身体活動,睡眠の自己効力感尺度は主観的健康管理能力尺度と有力な相関があった.結論:栄養バランス,身体活動,睡眠,節酒,禁煙の5つの健康習慣に対する自己効力感尺度を作成し,信頼性・妥当性を確認できた.
  • 鈴木 良美, 大森 純子, 酒井 昌子, 安齋 ひとみ, 小林 真朝, 宮崎 紀枝, 尾崎 章子, 平野 優子, 有本 梓, 安武 綾, 長 ...
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:日本の「地域保健活動におけるパートナーシップ」の概念を分析し,同概念の日本での特徴と地域保健分野への活用を検討する.方法:Rodgersの概念分析の方法論に基づき,同概念の特性,先行因子,帰結,代用語を明らかにした.結果:特性として,【異なる立場の人々・機関の対等な相互関係】という活動の理念と,【試行錯誤しながら関係をつくりともに活動を発展させていく】という方策が見出された.本概念は,【コミュニティで取り組む必要のある課題】,【社会の要請】,【専門職による活動の限界の認識と挑戦への志向】を先行因子として生じていた.さらに帰結として,【専門職の期待を超える個人・相互・コミュニティの成長と発展】と【コミュニティの健康指標の改善】をもたらしていた.考察・結論:本概念は,「異なる立場の人々・機関の対等な相互関係という地域保健活動の理念である.そしてこの理念を基盤に,活動を支えるしくみをつくりながら,互いに信頼し対等な関係をつくろうとし,目的・情報・経験を共有し,主体的に力を活かし育ちあうことを通じて,関係をつくりともに活動を発展させていくという地域保健活動の方策でもある」と定義された.本概念の日本での特徴は,相互の関係性を重視することであり,本概念は日本の地域保健活動において,パートナーシップを基盤として活動や評価を行う際の指針となると考えられる.
  • 戸村 ひかり, 永田 智子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    背景:在宅医療が推進されている中で退院支援の重要性が増しているが,退院後の結果と合わせて支援内容を評価した研究はない.目的:在宅への退院支援に必要な要素を明らかにするために,追跡調査を実施した.方法:機縁法で2つの病院を選定し,一般病棟に入院した60歳以上の要介護者10名を対象に,質的記述研究を行った.参与観察により入院中のデータを収集するとともに,退院2週間後に患者の自宅を訪問し,患者・家族へのインタビュー,観察に基づき退院後に生じた問題を特定した.退院後の問題発生有無によりケースを比較し,入院中の支援内容の相違から,在宅への退院支援に必要な要素を抽出した.結果:在宅への退院支援に必要な要素は〈病院内での支援〉,〈在宅に向けてのコーディネーション〉,〈つなぎ〉の3つであった.具体的な要素として,〈病院内での支援〉には【日常ケア】,【患者・家族への指導】の2つがあり,〈在宅に向けてのコーディネーション〉には【公的サービスの紹介】,【治療の継続】,【在宅ケア提供者との連絡・調整】,【病院内支援の確認・再調整】の4つがあった.考察:在宅への退院支援に必要な要素と退院後の問題との関係性を明示できた.不必要な退院後の問題を避けるためには,これらの要素を考慮する必要がある.
  • 片平 伸子, 本田 亜起子, 上野 まり, 北岡 英子, 廣川 聖子, 渡部 月子, 竹田 由美子, 畑中 高子, 別所 遊子
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:認知症高齢者グループホーム(以下,GH)における入居者の健康管理病状の変化や事故への対応,看護体制に関する実態と課題を把握する.方法:神奈川県内のGH442施設を対象として郵送法による質問紙調査を行った.結果:175施設から回答があった(回収率39.6%).定期的な通院・往診が必要な入居者がいるGHは7割以上であり,日常的な医療処置として皮膚処置が49.7%,浣腸・摘便が19.4%の施設で行われていた.過去3カ月間に病状の変化や事故は延べ460件あり,76施設(43.4%)で救急搬送を行っていた.看護職員がいる施設は65施設(37.2%),医療連携体制加算を算定している施設は80施設(45.7%)だった.看護職員の有無や加算算定の有無により,病状の変化や事故への対応に差はなかった.加算を算定して訪問看護ステーションと契約中のGHは14施設あり,訪問看護の効果として「医療面の対応が充実した」「症状の判断に迷ったときに相談できる」など,課題として「医師の意見と異なることがあり,判断に困る」などがあげられた.考察:GH入居者の医療・看護のニーズは高いと推察されたが,加算を算定している施設は半数以下であり,GHの医療連携において看護師の充足には課題があると考えられた.また,GH入居者の健康管理に訪問看護が一定の役割を果たしていることが示唆された.
  • 原田 直子, 榊原 久孝
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:レジスタンス運動および有酸素運動,柔軟性運動から構成されるwell-rounded training(以下,WRTと省略)は,高齢者の体力向上に有効であることが示されている.本研究は,地方自治体による前期高齢女性を対象とした地域WRT教室終了後7カ月間の自主活動における前期高齢女性の身体活動への効果について検討した.方法:対象者は,中日本のある町に在住の前期高齢者の女性18名で,自治体によるWRT教室およびその終了後の自主的WRT参加者である.自治体による教室は,町の保健センター主催で週1回,3カ月間実施された.その参加者による自主活動は,2週間に1回,自主的に実施された.教室開始時と教室終了時そして教室終了7カ月後に,質問紙調査,体力測定等を実施した.結果:「現在の体力に自信がありますか」との質問項目において,教室開始時と比較し終了時および7カ月後においても改善が認められた.体力などの項目では,教室開始時に比べ教室終了時のみでなく7カ月後においても,10m歩行,椅子立ち上がり運動,全身反応時間,長座体前屈の項目において維持する効果が認められた.結論:地域WRT教室終了後のWRT自主活動が高齢者の健康の保持に寄与することが示唆された.WRTは,高齢者を対象とした有効な運動プログラムと考えられる.
  • 笠井 真紀, 河原 加代子
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 72-79
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:住民組織活動の活動過程においてチームメンバーが活動を継続させている要因を明らかにし,今後の活動を支援するための示唆を得る.方法:住民組織である子育て世代市民ワーキングチームのメンバーのうち,研究協力者7名に半構成的面接によるグループインタビュー調査を実施し質的機能的に分析を行った.結果:メンバーの活動を継続させている要因として,『育児支援の必要性を感じた経験』『活動の継続につながった契機』『自分自身の意識の変化』『チームの成長』『チームのめざす姿』の5つのカテゴリが抽出された.考察:メンバーは自分の育児や周囲の育児状況により活動の必要性を感じて活動を継続し,そのなかでメンバーの意識は変化し,協働への理解も深まっていた.さらに,メンバーがエンパワメントしたことによりチームとしての成長や今後の課題が明らかになり,活動の継続に影響を及ぼしていたことが明らかになった.結論:保健師は住民の組織活動においてファシリテーターとなり,メンバー間での意見をまとめ役割分担や関係機関との連絡調整を行い,つながるための役割をとることで,チームの主体的な活動を継続的に支援することができる.
  • 丸谷 美紀
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:都市部福祉事務所に生活保護相談員として単独配置された保健師の援助行為を調査し,公衆衛生看護としての機能を明らかにする.方法:都市部福祉事務所で生活保護相談を担当する保健師1名に,生活保護相談で保健師らしい援助ができた事例への援助内容,担当した生活保護相談以外の活動内容に関して半構成面接を行った.また,日常業務の参加観察や記録の閲覧等により面接調査内容を補った.調査内容から要保護者に対する援助行為と生活保護相談以外の援助行為を抽出し,質的帰納的に分類整理した.結果:保健師の援助行為は,「支援を通じ本人の地域生活を包括的に把握しニーズを見出す」「セルフケア能力の補完・向上と支援関係構築により健康状態悪化と生活困窮の悪循環を断ち切る」「健康状態急変時に関係者を巻き込んで対応する」「多職種との連携強化・開発」「予防的視点に立った支援システムの開発」「保健医療サービスの質改善」,に整理され,公衆衛生看護の機能を満たしていた.考察:近年拡大する健康格差の是正を図るために,生活保護相談において公衆衛生看護として次の機能が特に求められる.要保護者の生活を包括的に捉え,健康面の支援を通じて福祉職と要保護者の関係を強化する,福祉部門と保健部門の通訳・橋渡しをする,自治体全体を見据えて健康的な政策づくりを提言する,保健福祉医療の質改善を図る.強化すべき機能は,保健部門との連携や効果的な保健活動の検討がある.
  • 村松 照美, 郷 洋子, 小屋 理恵, 川口 麻美
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2009/10/30
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域で生活している成人期の人々において,運動継続に影響している要因を明らかにする.研究方法:3市1町在住の22〜61歳までの運動継続者男女各5名に対して半構成的面接によりデータ収集した.その逐語録を作成し運動継続に影響している記述を抽出しカテゴリ化した.結果:運動継続に関する記述は243記録単位得られ,運動実施における継続要因,運動実施を可能とした要因,運動中断回避の要因の3つに分けられた.運動実施における要因は【運動実施へのきっかけ】【運動することの目的】【運動実施へのこだわり】【運動への思い】【運動中の心身的効果】【運動後の充実感】【運動によって見出した楽しみ】【運動による生活行動の変化】の8つのカテゴリと47サブカテゴリが抽出された.運動実施を可能とした要因には【運動実施が可能となった条件】の1つのカテゴリと10のサブカテゴリが抽出できた.運動中断回避の要因については【自分に合った運動条件の選択】【運動中断を回避する姿勢】の2つのカテゴリと16のサブカテゴリが抽出された.考察:意思決定バランス,運動ソーシャルサポート等の横断的研究において明らかになっている運動継続の要因も影響していると考えられたが,さらに背景や環境など,さまざまな要因が影響していることが示唆された.結論:ライフスタイルによって異なるさまざまな要因をふまえ,運動中断を回避し運動継続を可能とする支援の必要性が示唆された.
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