抄録
目的:地域の住民ニーズに対する効果的な支援システムを構築・発展させる上で有用な行政保健師の能力・行動特性としてのコンピテンシー・モデルを開発することである.コンピテンシーはMcClellandおよびスペンサーの定義に基づき,知識・スキルといった表面的なコンピテンシーと,特性・自己イメージ・動因といった深層的なコンピテンシーから構成されるものとする.方法・結果:コンピテンシー・モデル試案の作成(研究1)とその試案の活用の有用性の検証(研究2)から構成した.研究1:支援システムを構築・発展させた経験をもつ保健師5名を対象に,有効であった出来事について半構成的面接を実施し,成果につながる能力・行動特性に関して質的帰納的に分析した.その結果,支援システムの構築・発展には5つの段階があり,それらは準備とニーズの気づき,現状分析,方略の考案,実行,評価と修正から構成されていた.各段階の表面的あるいは深層的コンピテンシーとそれらの関係に基づきコンピテンシー・モデル試案を作成した.研究2:支援システムを構築中である保健師3名へ本試案を提示し半構成的面接を実施した,その結果,自身の考え方が活性化し,考え方や行動の有効性を確認でき,自身の課題を設定することができ,本モデルの有用性を検証できた.考察:本モデルは,知識・スキルの発揮には,具体化されていく特性・自己イメージが関連し,動因が次の段階を押し進めながら発展するといった特徴を有していた.