日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
孤独感を抱えていた初産婦が近隣住民とつながりを築いていく過程
秋葉 理江田口(袴田 )理恵河原 智江今松 友紀糸井 和佳臺 有桂田髙 悦子
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2013 年 15 巻 3 号 p. 23-31

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抄録
目的:本研究では,出産当初,近隣住民とのつながりがなく孤独感を抱えて育児を行っていた母親の,育児ならびに人とのつながりの状況と,母親の感情や考えがどのように変化しながら近隣住民とのつながりを築いていったか,という過程を明らかにすることを目的とした.方法:対象者は,地域子育て支援拠点を利用する,3歳未満の第1子を育児中の母親8人である.半構成的インタビューにて,産直後から現在までの,育児の状況,人とのつながりの状況,感情・考えについて質問し,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:つながりを築く過程は4つの段階から構成された.最初は【育児の苦痛と社会からの隔絶による母親自身の存在価値の喪失】の段階にあったが,産後3〜4か月ごろに【社会とのつながりへの希求と母親仲間への関心の高まり】の段階に移行した.さらに,近隣の母親仲間を得ることにより【母親仲間による世界の広がりと本当の友人への希求】の段階に入り,やがて【本当の友人による心の安定と人とのつながりに対する意識の広がり】の段階に至ることが明らかとなった.考察:出産当初近隣とのつながりのなかった母親が地域における人とのつながりを築いていく過程は,家族や昔からの友人を重視する考えから,子どもを育てていく生活の場としての近隣とのつながりを重視する考えへと,大きな価値観の転換を伴うものであることが示された.
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© 2013 一般社団法人 日本地域看護学会
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