日本地域看護学会誌
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市町村の福祉部門において精神障害者の個別援助活動に携わる保健師のジレンマ : ジレンマを構成する要素とその関係性に焦点を当てて
坪井 りえ飯田 苗恵大澤 真奈美原 美弥子齋藤 基
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2013 年 15 巻 3 号 p. 32-40

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抄録

目的:市町村の福祉部門において精神障害者の個別援助活動に携わる保健師のジレンマについて,ジレンマを構成する要素を見いだし,諸要素間の関係性を明らかにすることを目的とする.方法:A県内の市町村の福祉部門において,精神障害者の個別援助活動を行った経験が1年以上ある保健師12人を対象とした.質問内容として,(1)ジレンマの経験の有無,(2)ジレンマの経験の具体的な場面,(3)(2)の場面におけるジレンマの内容と最終的な判断について半構造化面接を行い,KJ法を用いて質的に分析した.結果:ジレンマを構成する要素は,【対象者の"人生にかかわる"人の1人になる】という対象者にかかわる意義の認識【"正解"のない道を行く】迷いや自信のなさ,【目の前の"現実"が仕事になる】という職業的アイデンティティの揺らぎであり,3つの要素間の矛盾する関係性からジレンマが生じていた.考察:保健師のジレンマは,精神障害者にかかわる保健師の姿勢と,福祉部門における援助活動や業務の実態が矛盾することから生じていた.ジレンマを乗り越えるためには,対象者にかかわる意義の認識を高め,福祉部門における職業的アイデンティティを確立するためのサポートや教育的支援が重要である.

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© 2013 一般社団法人 日本地域看護学会
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