抄録
目的:わが国における福島第一原子力発電所事故とそれにまつわる避難に関する文献を検討し,放射線災害の避難者支援の手がかりを得ることを目的とした.方法:CiNii Article,国会図書館OPAC,医中誌Web,J-GLOBALを用いて,「福島原発事故」「避難」「自主避難」「健康」の4語で2011年4月〜2014年3月までに発表された文献を検索した.結果:収集した113件の文献は放射線の影響(63件),強制避難・自主避難(19件),母子ケア(16件),メンタルヘルスへの影響と支援(15件)の4つに分類された.避難者は発災直後からPTSD,気分・不安障害,うつ傾向を示していた.また強制避難者は故郷喪失,経済的被害,被ばくの問題を抱えていた.一方,自主避難者の多くが母親と未就学児であり,自主避難中の母親には経済的負担や育児負担があった.研究や支援の対象は母子であり,妻子が自主避難している男性を対象とした研究は見当たらなかった.考察:原子力発電所の周辺地域では発災後の住民の避難方法,生活支援,心身のケアの提供体制について,発災後の時期別および年代別の支援計画をあらかじめ策定しておく必要があると考えられる.今回の文献検討では妻子が自主避難している男性を対象とした研究は見当たらなかったため,今後は彼らの生活状況を解明し,支援策を検討する必要があると考えられる.