日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
18 巻, 2-3Comb-No 号
(2・3合併)
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 佐々木 純子, 難波 峰子, 二宮 一枝
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 4-12
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:本研究は,訪問看護ステーション(以下,訪看ST)管理者の職務継続意向に対する職務エンパワメント,管理困難感,ワーク・エンゲイジメントの関連を明らかにすることを目的とした.方法:対象は全国の訪看STから各県毎に112の訪看STを無作為抽出し,休止廃止の事業所を除いた2,882か所の管理者とし,無記名自記式調査票にて実施した.調査項目は管理者の基本属性,職務エンパワメント,管理困難感,ワーク・エンゲイジメント,現在の訪看STでの管理者としての職務継続意向とした,本研究では「職務エンパワメントは管理困難感とワーク・エンゲイジメントに影響を与え、また職務継続意向にも影響する」という因果モデルを仮定し,構造方程式モデリングにより検討を行った.分析には回答834人のうち,母体組織に雇用されている管理者652人を対象とした.結果:訪看ST管理者において職務エンパワメントは,管理困難感とワーク・エンゲイジメントのそれぞれを介して職務継続意向に影響した.また,職務エンパワメントは職務継続意向に直接的には影響せず,職務継続意向への影響は管理困難感の方がより大きな影響要因であった.結論:訪看ST管理者の職務継続のためには,管理困難感の軽減が必要であり,管理困難感への強い影響要因である職務環境としての職務エンパワメントの改善が重要であることが示唆された.
  • 畑下 博世, 鈴木 ひとみ, Denise Saint Arnault, 川井 八重, 軸丸 清子, 河田 志帆, 井倉 一政
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 13-22
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日本人女性がストレスを受けたときに経験する心身の苦痛・苦悩に対処し,解決を導くための社会関係と探索行動を明らかにし,日本人女性の健康に影響する文化的特性について考察し,看護介入への示唆を検討することである.日本人女性12人を対象に半構成的インタビューを実施し,分析的エスノグラフィーの手法を用いて分析した.その結果,社会関係は,【バランスのとれない家族の形】【根強く影響を受ける親子関係の歪み】【有益な社会的やりとり】【本音をみせない社会関係の継続】の4つのコア・テーマが抽出され,日本の本音や建前の文化,伝統的性別役割や夫婦の伴侶性が影響していると考えられた.一方,探索行動は,【自己の苦悩を開放することへの理性的な抑制】【問題解決への意思決定】【能動的な自己内解決】の3つのコア・テーマが抽出され,恥の文化に代表される日本社会の価値観が影響を及ぼしていることが示唆された.
  • 柳瀬 裕貴, 成瀬 昂, 田口 敦子, 永田 智子
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 23-32
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:地域住民における終末期在宅療養の実現可能性の認識に関連する要因を,地方中核都市(A市)と郡部(B町)で明らかにする.方法:2012年9月,年齢に基づく層別無作為抽出法を用いて対象者(A市1,800人,B町1,800人)を選定し,質問紙調査を実施した.終末期在宅療養の実現可能性の認識を従属変数とした多重ロジスティック解析を行った.分析は2地域でそれぞれ行った.結果:A市の620人(有効回答率34.8%),B町の493人(同29.0%)を分析対象とした.A市では,終末期在宅療養を実現可能と認識する者は117人(18.9%),B町で68人(13.8%)であった.終末期在宅療養の実現可能性の認識には,A市では,自宅で療養することを支援する病院や診療所があると思うこと(OR=3.28,95%CI:1.94〜5.53),地域の人は家族の介護をする際に助けになってくれると思うこと(OR=2.09,95%CI:1.11〜3.90)が正に関連し,終末期の医療費は自宅の方が病院より高いと思うこと(OR=0.33,95%CI:0.18〜0.61),近親者の死の経験があること(OR=0.55,95%CI:0.34〜0.89)が負に関連していた.B町では,在宅看取りによいイメージがあること(OR=2.88,95%CI:1.58〜5.23),地域の人は家族の介護をする際に助けになってくれると思うこと(OR=2.67,95%CI:1.40〜5.08)が正に関連し,近親者の死の経験があること(OR=0.52,95%CI:0.29〜0.93)が負に関連していた.結論:終末期在宅療養の実現可能性に関する地域住民の認識とその関連要因は地方中核都市部と郡部で異なっていた.住民どうしの関係性を構築することで,「地域の人は助けになってくれる」と地域住民が認識できるような取り組みを行うことの重要性が両地域で示唆された.
  • 楢橋 明子, 尾形 由起子, 山下 清香, 小野 順子
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 33-40
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:在宅療養する神経難病患者への支援を行っている保健師の関係機関・関係者の調整技術を明らかにする.方法:県型保健所で神経難病患者の在宅療養を支援した経験のある保健師6人に,半構成面接を行い,インタビュー内容を質的記述的に分析した.結果:調整技術として4つのカテゴリーと,28のサブカテゴリーが抽出された.抽出された4つのカテゴリーは【患者・家族のニーズを顕在化させると同時に,関係機関の支援の準備性を高め,支援ネットワーク形成の素地をつくる】【患者・家族が必要な時期に必要な関係機関とつながることを支える】【患者の状況に合わせ制度の枠にとらわれず調整者の活動を支援する】【関係機関・関係者のつながりを太く保ち,患者の病状や状況の変化に対応したケアが提供し続けられるようにする】であった.考察:保健師は,本人・家族と関係機関・関係者に働きかけ,準備性を高めたうえで両者をつないでいた.また,必要になるサービスを判断し,つなげることができる関係機関・関係者につなげることを重要視していた.関係機関・関係者がつながりを保てるよう支援していた.調整者には,進行する症状の見通しをもち,変化し続ける状況に対して自立して支援していけるよう支援を行っていた.これらの活動の積み重ねが関係機関・関係者のネットワークをつくり,神経難病患者が在宅療養できる地域づくりにつながっていくと考える.
  • 西嶋 真理子, 松浦 仁美, 星田 ゆかり
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 41-50
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:発達障害児の親を対象に保健師等がグループトリプルPを実施し,その効果を検証する.方法:発達障害児の親12人を先に介入するA群と後で介入するB群に無作為に分け,両群にグループトリプルPの介入を行い,介入前後で評価指標を用いた調査を行った.介入したA群と対照群として待機中のB群を比較後,A群には介入1か月後と3か月後にも調査を行い,介入直前と比較した.さらにA群B群を合計した合計群について,介入直前と介入直後を比較した.結果:対照群では変化がなかったが,介入したA群は子育て場面での多弁さと,子どもの感情的症状が改善傾向であった.A群の介入1か月後では抑うつ,3か月後では抑うつ,子育て場面の手ぬるさと過剰反応がそれぞれ介入直前より有意に改善した.合計群では,子育て場面でのふるまい(PS)の過剰反応と総合スコア,子どものむずかしい行動(SDQ)の総合スコア,ストレスが介入直前に比べて有意に改善した.結論:発達障害児の親を対象に保健師等が行ったグループトリプルPは,子育て場面でのふるまい,子どものむずかしい行動,ストレスや抑うつに有意な改善が確認できた.本研究では事例数が少ないという限界があるものの,グループトリプルPは発達障害児の親に対して有効な支援方法になり得ることが示唆された.
  • 桐生 育恵, 佐藤 由美
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 51-60
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:特定保健指導の初回面接において,対象者の行動計画設定の支援に用いられる保健師の思考プロセスを明らかにすることである.方法:調査1では,特定保健指導の初回面接において,対象者の行動計画設定までの支援に用いた思考の内容を保健師19人にインタビューし,修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いて分析した.調査2では,保健師11人を2グループに分け,調査1の結果の妥当性についてグループインタビューを行った.結果・考察:特定保健指導の初回面接での,対象者の行動計画設定の支援における保健師の思考プロセスは,【対象者の全体像のイメージ】【健康問題の共有】【生活習慣改善意欲の引き出し】【生活習慣改善目標の設定支援】からなるセルフ・エンパワメントプロセスと,【心理の洞察】【面接の進め方の検討】からなるコアプロセスの2つから構成された.保健師は,初回面接では特にコアプロセスを重要視していることが明らかとなった.
  • 阿部 真美
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 61-68
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:脳卒中患者が急性期病院から回復期リハビリテーション病院に転院する際の退院支援・退院調整における情報連携について,困難度に関連する背景を明らかにする.方法:急性期病院590か所の退院支援・退院調整専門部署所属看護職員に質問紙調査を実施した.対象を情報連携時「困難あり」「困難なし」「どちらでもない」の3群に分けて従属変数とし,病院の基本情報,連携時・自院・連携先・患者・家族の背景との関連を単変量解析と順序ロジスティック回帰分析で調べた.結果:有効回答139件を分析した.急性期病院内の背景「院内の職種・部署間が組織的に対立し連携体制の構築ができない」「役割分担が不十分」「連携先の機能や役割に対する理解不足」「職員間の退院支援・調整レベル(能力)の差」「職種間の退院支援・調整レベル(能力)の差」と,連携先の背景「職員間の退院支援・調整レベル(能力)の差」が困難度と有意に関連した.特に「職員間の退院支援・調整レベル(能力)の差」がある場合と「連携先の機能や役割に対する理解不足」がある場合,情報連携を困難と感じる割合が高かった.結論:情報連携時の困難解消のため,職員間の情報連携の能力差と連携先に関する知識不足の解決に向けた業務遂行基盤構築や学習機会の設置,院内職員に対する地域内の機能・役割分担の周知,地域内で連携に関する教育を充実する必要性が示唆された.
  • 吉岡 京子, 黒田 眞理子
    原稿種別: 本文
    2015 年 18 巻 2-3Comb-No 号 p. 69-78
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:わが国における福島第一原子力発電所事故とそれにまつわる避難に関する文献を検討し,放射線災害の避難者支援の手がかりを得ることを目的とした.方法:CiNii Article,国会図書館OPAC,医中誌Web,J-GLOBALを用いて,「福島原発事故」「避難」「自主避難」「健康」の4語で2011年4月〜2014年3月までに発表された文献を検索した.結果:収集した113件の文献は放射線の影響(63件),強制避難・自主避難(19件),母子ケア(16件),メンタルヘルスへの影響と支援(15件)の4つに分類された.避難者は発災直後からPTSD,気分・不安障害,うつ傾向を示していた.また強制避難者は故郷喪失,経済的被害,被ばくの問題を抱えていた.一方,自主避難者の多くが母親と未就学児であり,自主避難中の母親には経済的負担や育児負担があった.研究や支援の対象は母子であり,妻子が自主避難している男性を対象とした研究は見当たらなかった.考察:原子力発電所の周辺地域では発災後の住民の避難方法,生活支援,心身のケアの提供体制について,発災後の時期別および年代別の支援計画をあらかじめ策定しておく必要があると考えられる.今回の文献検討では妻子が自主避難している男性を対象とした研究は見当たらなかったため,今後は彼らの生活状況を解明し,支援策を検討する必要があると考えられる.
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