抄録
放射線照射後ラット肺を用いて, 肺内マクロファージの形態および細胞表面抗原の発現の変化について経時的に検討した. 形態学的には, 炎症が組織学的に著明となる以前の照射後2週目より, 気管支肺胞洗浄液中に腫大した泡沫状細胞群と小型細胞群を認め, 炎症の進行とともにこれらの割合は増加し, 鎮静化とともに消退した. 表面抗原の発現は, 4週目より肺胞マクロファージの major histocompatibility complex (MHC) class II 抗原陽性細胞の割合の増加およびマクロファージ亜分画の変化が認められた. これらの変化は6, 8週で著明となるが, 16週以降は鎮静化し, MHC class II の増加が最も遷延した. このように, 組織学的に炎症が明らかとなる以前, 又は炎症の早期より, 正常とは異なるマクロファージの形態上および細胞表面抗原発現の変化を生じたことは, マクロファージの機能的変化を示唆するもので, 活性化された肺内マクロファージが放射線照射後の肺障害の発症に何らかの関与をしている可能性が推察された.