抄録
【目的】在宅ケアに必要なケアの要素と訪問看護婦の能力について,ケアの主要な働きである「成長を促す」という概念に焦点を当てて分析し,訪問看護婦に必要な能力を追及した.【方法】平成10年度の事例検討会に出された在宅療養中の介入困難な6事例と訪問看護婦6名を対象に,看護婦が事例について説明した内容を,できるだけ正確に,解釈を加えず書きとめた.それを後日文字にして整理し,再度確認と修正を依頼した.最終的に得られたデータを療養者,看護婦,および両者の変化に注目し内容分析の手法を用いで分析した.その結果をM.メイヤロフのケアの8つの要素と対比させた.【結論】(1)「知識」「リズムを変えること」「忍耐」「正直」「信頼」「謙遜」「希望」「勇気」といったメイヤロフがケアの本質の要素として述べている8項目のほかに,「傾聴」「受容」「調整」「代弁」「力を与える」「意図的にかかわる」「まき込まれる」「かかわり続ける」「引き下がる」「承認」という10の要業が抽出された.(2)メイヤロフのいう8項目のうち,「知識」と「リズムを変えること」は本研究において顕箸に認められ,知識不足や知識が明確でない場合,積極的にそれを求めていくか否かがケアの質に影響を及ぼしていた.「リズムを変えること」には「他の方法でまた試みる」と「非行動性」といった2つの側面があった.(3)本研究において新たに認められた10項目のうち,特徴的なものは「意図的にかかわる」「まき込まれる」「かかわり続ける」「引き下がる」の4項目であった.(4)訪問看護婦-対象者間の相互作用は,きわめて個別性が強く,普遍化するには至らなかったが,ケアの質に明らかに影響を及ぼしていた.