抄録
本研究の目的は,高齢在宅療養者の生きがいの構造と療養生活の受け止め方との関連性を明らかにし,その関連性をみること,高齢在宅療養者が生きがいを持って生活できるように支援するための方法を検討することである.研究対象はH県看護協会の訪問看護ステーションを利用しており,コミュニケーションがとれる高齢在宅療養者で,研究の同意が得られた34名である.研究方法は訪問看護婦に同行し,ケア実施時またはケア終了後30〜60分をめやすに生きがいの内容および療養生活の受け止め方について面接し,対象者の許可を得て録音した.録音した内容は逐語的に書き起こし,コーディングし,カテゴリー化した.27名について面接内容を分析した結果,生きがいを持っている,あるいは実現したいと望んでいる高齢在宅療養者26名から生きがいに繋がる活動を抽出した.その内容を構造化すると,「基本的な活動(4小項目)」「社会的な活動(7小項目)」「創造的な活動(20小項目)」の3つのカテゴリーに分類することができた.さらに,高齢在宅療養者の病気や療養生活に関する意識を分析した結果,「肯定的な受け止め方」と「否定的な受け止め方」に分類することができた.生きがいの構造で自己実現に繋がる活動と療養生活の受け止め方との関連性を分析すると,望ましい「創造的な活動があり療養生活を肯定的に受け止めている」と「創造的な活動があり療養生活を肯定的と否定的に受け止めている」「創造的な活動を求め療養生活を肯定的と否定的に受け止めている」「創造的な活動がなく療養生活を否定的に受け止めている」の4つに分類することができた.「創造的な活動があり療養生活を肯定的に受け止めている」者は4名と少なく,いずれも寝たきり度がランクAで,公的な保健・医療・福祉サービスとともに家族・友人等によるインフォーマルなサポートも受けていた.看護職およびその他の専門職は,高齢在宅療養者が創造的な活動を実現できるように,本人の過去の趣味を把握し,それらを取り入れた療養生活ができるように,家族,ボランティア等の協力を得て支援する必要がある.