日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
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東日本大震災を経験した漁村に暮らす高齢者の想い
―被災高齢者の語りより―
佐藤 美香子張 平平
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2018 年 21 巻 1 号 p. 63-69

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抄録

目的:東日本大震災を経験した漁村に暮らす高齢者の想いを明らかにすることを目的とした.

方法:東日本大震災の被災地域の漁村に暮らす高齢者5人を対象とし,半構成面接にて聴取しデータの分析は質的統合法(KJ法)を参考に分析した.

結果:5人の被災した対象者への個別インタビューから得られたすべての記述データを,KJ法を参考に分析した.その結果,311枚の元ラベル,36枚の表札,8つの最終表札を作成した.

 『東日本大震災を経験した漁村に暮らす高齢者の想い』の主題に基づいて【大津波による翻弄と悲嘆】【被災後の窮乏と苦悩】【心身機能低下への悔恨】【健康回復への願望】【公的扶助の恩恵と失望】【相互扶助によるつながりへの信頼】【再建の重圧と意欲】【地域で生きる希望】が抽出された.

考察:東日本大震災を経験した漁村の高齢者は,悲嘆,苦悩,悔恨,願望,失望,信頼,意欲,希望等のさまざまな想いをもちながら状況に対応していた.支援にあたっては,高齢者自身が生きる目標をもてるように支援するとともに,漁村という地域を中心とした相互扶助を重視し,災害というリスクと共に生きる漁村の高齢者の背景を理解しながら高齢者の生きることを支援する必要があることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本地域看護学会
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