日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
乳幼児をもつ生活困窮者世帯の育児に関わる支援課題および市町村保健師の活動内容
山縣 千開春山 早苗
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2020 年 23 巻 1 号 p. 32-41

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抄録

目的:乳幼児をもつ生活困窮者世帯のなかの児童虐待ハイリスクケースを対象とした育児支援における支援課題と活動内容を明らかにし,妊娠・出産・育児を支援し,児童虐待を予防するための市町村保健師の活動方法を検討する.

方法:質的記述的研究デザインで,研究協力者は乳幼児をもつ生活困窮者世帯に対する支援で成果を上げたと認識できる事例をもつなどの保健師とし,A県内の保護率上位10市町村の統括的立場の保健師に条件に該当する研究協力候補者の選定を依頼した.データ収集方法は,半構造化面接とした.

結果:9市町村の9人の保健師から聴取した9事例を分析した.乳幼児をもつ生活困窮者世帯への育児に関わる支援課題は9カテゴリー,活動内容は25カテゴリーが生成された.支援課題カテゴリーには【子どものことにお金をかけられずに子どもの成長発達が妨げられる可能性】などがあり,活動内容カテゴリーには《生活困窮者自立支援事業相談員の情報提供により,支援の必要な世帯に家庭訪問でアウトリーチをする》などがあった.

考察:支援課題の要因である「経済的困難」は,「妊娠中の健康管理力や養育能力の低さ」「生活能力の低さ」「移動手段の欠如」と重なっており,これらが重なることで不適切な養育となる.保健師は,経済的困難に加えて他の要因が重なっていないかアセスメントして支援を判断する必要があり,養育問題の背景に経済的困難がないかを積極的に把握しなければならない.

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© 2020 一般社団法人 日本地域看護学会
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