2020 年 23 巻 1 号 p. 42-51
目的:訪問看護新規利用者の訪問看護開始期における緊急対応が発生する要因を明らかにする.緊急対応の定義は,療養者・家族の要望により,計画以外の緊急訪問看護(緊急訪問)や電話相談で対応(電話対応)したこととした.
方法:訪問看護開始日~14日間に緊急対応が発生した訪問看護新規利用者の2015年10月~2016年9月のカルテ調査である.調査施設は訪問看護ステーション15か所である.調査内容は緊急対応の内容,社会資源等である.分析方法は,緊急対応の要因を明らかにするため訪問看護開始日から7日(1週目)と8日~14日(2週目)に分け,χ2検定,緊急対応の有無を従属変数とするロジスティック回帰分析を用いた.
結果:緊急対応した新規利用者は95人(緊急対応発生率16.3%)であり,緊急訪問60人(63.2%),電話対応35人(36.8%)であった.対応時期は1週目に緊急訪問,電話対応とも有意に多かった(P<0.02).緊急訪問に影響を及ぼす要因として1週目では,認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上(オッズ比10.09:95%信頼区間1.27─81.11),2週目は,医療処置の実施(3.87:1.06─14.12)であった.
考察:緊急訪問の発生要因は1週目では認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上で10倍,2週目は医療処置の実施で10倍のリスク要因であった.認知レベルを評価し早期に情報を共有すること,医療処置については教育・支援を行うことで緊急訪問の発生を減少させることが示唆された.