日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
愛着形成が成人期におけるSOC(Sense of Coherence)と自殺リスクに及ぼす影響
藤岡 神奈髙嶋 伸子
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2021 年 24 巻 1 号 p. 32-40

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抄録

目的:養育者との愛着形成が成人期におけるSOC(首尾一貫感覚)と自殺リスクに及ぼす影響の因果構造を明らかにし,支援者が自殺予防対策を講じるための知見を得ることを目的とした.

方法:地方都市A市に住む20~39歳の男女2,000人を層化無作為抽出し,無記名自記式質問票調査を実施した.SOCと自殺リスク(K6)および,養育者との愛着(母親役割者とのECR-RS;アダルト・アタッチメント・スタイル尺度,父親役割者とのECR-RS),精神的不健康感の因果構造を共分散構造分析により分析した.

結果:「自殺リスクと母親役割者とのECR-RS,精神的不健康感,SOCの因果モデル」(GFI=0.922, AGFI=0.885, CFI=0.943, RMSEA=0.072)および「自殺リスクと父親役割者とのECR-RS,精神的不健康感,SOCの因果モデル(GFI=0.928, AGFI=0.893, CFI=0.944, RMSEA=0.070)を作成した.2つのモデルに共通して,精神的不健康感から自殺リスクの標準化パス係数が最大であった.また,ECR-RSはSOC, 精神的不健康感を経由してK6を決定係数(R2)=0.75と規定していた.

考察:精神的不健康感が自殺の「意識的な動機」のひとつであり,母親役割者や父親役割者それぞれとの愛着形成が自殺の「無意識的な動機」のひとつになる因果構造が明らかになった.したがって,成人期の自殺予防対策のためには,産業保健分野と地域保健分野の連携したメンタルヘルス対策に加え,地域保健分野における母親役割者や父親役割者それぞれとの乳幼児(特に生後6か月~5歳前後)に対する愛着形成を深める支援対策が求められる.

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© 2021 一般社団法人 日本地域看護学会
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