2021 年 24 巻 2 号 p. 30-39
目的:高齢者福祉分野の保健師が委託型地域包括支援センターとともに,地域包括ケアの発展に向かううえで直面している経験を明らかにすることを目的とする.
方法:高齢者福祉分野の保健師8人に半構造化面接を行い,修正版グランデッド・セオリー・アプローチを用いて質的帰納的に分析した.
結果:19の概念で構成される7つのカテゴリーが抽出された.高齢者福祉分野の保健師は委託型包括との間で生じた【予防をめぐる奮闘】を起点に【包括と担当部署の狭間の苦悩】と向き合い【活動をみせる】ことや【後方からコーディネート】を行い,その取り組みに対し【内省による立て直し】をしていた.このなかで,高齢者福祉分野の保健師の取り組みは【組織の覚醒】を生み,【地域包括ケア発展への気づき】を得ることにつながっていた.
考察:高齢者福祉分野の保健師が,予防重視の支援展開の力と行政に属する立場を強みとし,包括や担当部署などを巻き込み,【内省による立て直し】を繰り返しながら【活動をみせる】ことや【後方からコーディネート】することにより,課題解決につながることが明らかとなった.それら高齢者福祉分野の保健師の取り組みから生まれた周囲の変化とともに,委託型包括との協働には〈司令塔を担える組織〉として成熟していくことが,地域包括ケア発展へのアプローチとして重要であることが示唆された.