目的:結核をもち生活している人々を支援していくためには彼らの状況を理解し,1人ひとりの状況に合わせた支援を展開していくことが求められている.本研究の目的は,結核回復者の結核の認識と結核治療に関連する行動に着目し,結核という病の受け止め過程を明らかにすることである.
方法:治療終了後6か月以上経過した結核回復者5人を対象に半構成的面接を行い,データを質的に分析した.
結果:結核の認識として6つのカテゴリーが抽出された.【予想外の診断への困惑】【診断への怒り】【服薬への期待】【治療が思うように進まない焦り】【結核を抱えた生活への緊張】【周囲との関係性が崩れることへの不安】が示された.結核治療に関連する行動は,【生活の段取りをつける】【結核発病の引き金を振り返る】【隔離中の時間が有効になるようにする】【お互いに励まし合う】【保健師を社会との仲立ちにする】【生活習慣の改善に努める】ことが抽出された.
考察:結核回復者は結核診断に戸惑い,その診断に怒りを感じ,葛藤しながら入院の指示に従っていた.入院中は,発病までの生活を振り返り,副作用への不安をもちつつも治ることを信じて日常を取り戻すために服薬を継続していた.退院後は服薬が完了しても再発を恐れ,結核に罹患した事実に対峙しながらいまの生活を送っていることが示された.個々の人々の生活状況や結核という病の受け止め過程に応じた支援が求められる.