2022 年 25 巻 2 号 p. 32-39
目的:自立支援協議会精神障害専門部会での個別支援会議録を分析することにより,地域の精神障害者の支援課題を明らかにし,その解決のための支援体制の整備について検討することを目的とした.
方法:個別支援会議録96件を対象として,個別の支援課題について内容分析を行った.本研究は和歌山県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した.
結果:個別支援課題として,【精神疾患の障害特性に応じた生活支援の必要性】【自立支援を促す社会資源が不十分であること】【ライフステージにおける生活課題の達成を促す支援の必要性】【関係機関が連携して支援する必要性】の4つのカテゴリーと25のサブカテゴリーが抽出された.
考察:個別支援の対象者は40歳代が多く,就労による社会復帰の課題と同時に親の高齢化に伴う健康問題や介護課題を抱えており,対象者本人だけでなく家族全体への支援やサービスの調整が必要である.子育て世代や労働世代の流入が多い地域特性から,多問題家族や家族の発達課題への支援が多く,家族支援を軸とした包括型の支援体制が求められる.保健・医療・福祉・教育・就労といった幅広いニーズをもつ障害者福祉と給付管理的な性格が強い高齢者福祉では,制度体系やケアマネジメント面において相違や隔たりはあるが,複雑かつ脆弱な家族単位の問題を解決し,精神障害者の地域生活を支えていくためには包括的な連携体制を整えていくことが重要な課題である.