日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
25 巻, 2 号
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研究報告
  • 細谷 紀子, 佐藤 紀子, 杉本 健太郎, 雨宮 有子, 泰羅 万純
    2022 年 25 巻 2 号 p. 4-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:全国市区町村で行われている災害時の共助を意図した平常時の保健師活動を明らかにする.

    方法:2019年中に災害救助法適用があった箇所を除く1,463市区町村の統括保健師を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を行った.災害時の共助を意図した活動実施の有無と実施有の場合その概要(自由記述)を調べ,活動の対象や方法の類似性で分類整理した.

    結果:調査回収数は541件,有効回答535件(36.6%)であり,共助を意図した活動「実施有」は160件(29.9%)であった.活動内容は199コード,50小カテゴリー,21サブカテゴリー,9カテゴリーを得た.カテゴリーは「住民グループを単位に災害への備えについて話し合いや訓練を行う」「地区組織等と共に要支援者を包摂する防災体制づくりを行う」「保健事業や健康イベントと災害時の共助に向けた活動を連動させる」「多様な方法や内容による教育活動を住民対象に行う」「地域包括ケアや子育てを趣旨とする会議体で防災や共助について協議や対策を行う」などであった.

    考察:全国市区町村で行われている災害時の共助を意図した平常時の保健師活動の特徴は,「要配慮者を包摂する共助を生み出す住民グループへの支援と協働」「日々の保健活動との連動による災害時の共助を推進するポピュレーションアプローチ」「平常時および災害時の共助を恒常的に機能させるシステムづくり」と考えられた.

  • ─地域包括支援センター看護職のインタビューより─
    林 純子, 林 裕栄, 善生 まり子, 張 平平
    2022 年 25 巻 2 号 p. 13-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:地域包括支援センターの看護職が行う独居の認知症高齢者の症状の進行段階に合わせた支援内容を明らかにする.

    方法:地域包括支援センターでの経験年数5年以上の看護職10人を対象に半構造化面接を行い,得られたデータを質的記述的に分析した.

    結果:6つのカテゴリー,36のサブカテゴリー,109のコードが抽出された.看護職は認知症高齢者の【現状を把握し今後の進行状態を予測する】ことから必要な支援を選択していた.看護職は【困ったときに思い出してもらえる人になる】ために信頼関係を築き,【地域で安心して生活できる環境をつくる】ための働きかけを行っていた.さらに症状が進むと介護保険サービスを活用し【独居生活を続けるために必要なサポートにつなぐ】ことを経て【次の支援チームへのかけはしとなる】役割を担っていた.そして,これらの支援を行ううえで基盤となるものは,常に【その人らしく生きることを支える】という姿勢であった.

    考察:地域包括支援センターの看護職は認知症高齢者と早い時期から信頼関係を築く努力をし,互助から共助へと進行段階に合わせた適時適切な支援を行っていた.そして,築いた関係性を基盤として,認知症高齢者の意思決定を支援し,その意思を尊重し,その人らしい生き方を支えることを大切にしていた.たとえどの時期からの関わりであっても常にその人らしさの軸がぶれないように支援の方向性を定めていくことが重要である.

  • 佐藤 仁美, 松永 篤志, 田口 敦子
    2022 年 25 巻 2 号 p. 23-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,医療・保健分野における災害に関するコミュニティ・レジリエンスの定義と構成概念を明らかにすることを目的とした.

    方法:Rogersの概念分析法を用いた.対象文献はPubMedに加え,医中誌Webを用い,検索された88文献から無作為に抽出した33文献とした.分析は属性,先行要件,帰結の視点で質的に行った.

    結果:属性は【コミュニティの災害後に再び安定した状態になる能力】【災害に対しコミュニティメンバーが共に行う行動】【コミュニティの災害後に安定していくプロセス】の3つのカテゴリー,先行要件は【コミュニティの安定】【災害に備える住民の存在】【人々のつながりの存在】【住民の災害に関連した課題の共有】【有能なリーダーの存在】の5つのカテゴリー,帰結は【住民の健康】【コミュニティの発展】【人々のつながりの向上】の3つのカテゴリーが抽出された.

    考察:医療・保健の分野における災害に関するコミュニティ・レジリエンスは「コミュニティの災害後に再び安定した状態になる能力であり,それを基にした災害に対しコミュニティ・メンバーが共に行う行動であり,さらに,それらを活用しコミュニティの災害後に安定していくプロセスである」と定義された.この概念を用いる際には,能力,行動,プロセスの3つの属性を混合して用いるのではなく,区別して用いる必要がある.

地域看護活動報告
  • 石井 敦子, 岩村 龍子
    2022 年 25 巻 2 号 p. 32-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:自立支援協議会精神障害専門部会での個別支援会議録を分析することにより,地域の精神障害者の支援課題を明らかにし,その解決のための支援体制の整備について検討することを目的とした.

    方法:個別支援会議録96件を対象として,個別の支援課題について内容分析を行った.本研究は和歌山県立医科大学倫理審査委員会の承認を得て実施した.

    結果:個別支援課題として,【精神疾患の障害特性に応じた生活支援の必要性】【自立支援を促す社会資源が不十分であること】【ライフステージにおける生活課題の達成を促す支援の必要性】【関係機関が連携して支援する必要性】の4つのカテゴリーと25のサブカテゴリーが抽出された.

    考察:個別支援の対象者は40歳代が多く,就労による社会復帰の課題と同時に親の高齢化に伴う健康問題や介護課題を抱えており,対象者本人だけでなく家族全体への支援やサービスの調整が必要である.子育て世代や労働世代の流入が多い地域特性から,多問題家族や家族の発達課題への支援が多く,家族支援を軸とした包括型の支援体制が求められる.保健・医療・福祉・教育・就労といった幅広いニーズをもつ障害者福祉と給付管理的な性格が強い高齢者福祉では,制度体系やケアマネジメント面において相違や隔たりはあるが,複雑かつ脆弱な家族単位の問題を解決し,精神障害者の地域生活を支えていくためには包括的な連携体制を整えていくことが重要な課題である.

資料
  • ─A大学における保健師教育課程選抜試験受験の背景─
    松本 千晴, 大河内 彩子
    2022 年 25 巻 2 号 p. 40-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:保健師教育課程選択制の大学における,学生の保健師教育課程選抜試験受験の背景を明らかにする.

    方法:A大学の保健師教育課程4年生14人に,個別で半構成的面接調査を実施した.選抜試験受験の背景やきっかけと判断できる語りを抽出してコードを作成し,質的記述的分析を行った.

    結果:選抜試験受験の背景として,【「手に職」志望】【親の勧め】【保健師との接点】【公衆衛生看護学的視点の素地】【公衆衛生看護学への関心】【将来の職業への迷い】【保健師になる初志の貫徹】の7つのカテゴリーが抽出された.

    考察:学生の多くは,【「手に職」志望】であった.そのなかでも,入学前から【保健師との接点】があった者や,これまですごしてきた家庭環境・社会環境の影響を受け【公衆衛生看護学的視点の素地】をもつ者は,入学時点で保健師になることを志望していた.さらに,彼らは,【保健師になる初志の貫徹】により選抜試験を受験する傾向にあった.ほかにも,【親の勧め】が影響し受験する者もいた.入学後は,【公衆衛生看護学への関心】がもてるような講義や実習を展開することで,学生が保健師を将来の職業の1つとしてとらえ,保健師教育課程の履修を希望する可能性がある.また,選抜試験を受験したものの,保健師と看護師のどちらにするか【将来の職業への迷い】を抱く学生の内情も垣間みれた.そのような学生に配慮した教育や職業選択における支援も必要である.

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