2023 年 26 巻 1 号 p. 69-76
目的:新任期保健師研修における事例検討を通して,保健師が行う母子支援に必要と考える情報と判断を問う質問内容の特徴を明らかにし,アセスメント力向上への示唆を得る.
方法:A保健所管内新任期保健師研修で行われた母子支援の事例検討の質問内容を分析した.事例検討の逐語録から新任期保健師,プリセプター,管理期保健師のグループごとに質問内容を抽出しカテゴリー化した.
結果:研究参加者は,保健師25人(新任期保健師11人,プリセプター7人,管理期保健師7人)であった.事例検討では,《児の成長発達の経時的評価》《育児に向き合う心のバランス》《母の児に対する関わり方の違和感》《親の人物像や生活歴》《親の育児観》《家族全体の関係性とサポート力》といった【家族の育児力を判断する問いかけ】で情報整理がされていた.また,《家族の育児力に合わせた働きかけ》《介入の手がかり》《専門職の判断を踏まえた課題の見極め》といった【介入の機会と方向性を探る問いかけ】で支援の検討を促していた.
考察:母の育児力の判断を中心に据えて,発達に合わせた支援経過を時間軸で捉え,家族全体の総合的な育児力の判断を促す特徴が示された.支援では専門職の判断を共有し介入のタイミングと方法を見極め,方向性の検討を促していた.新任期保健師と先輩保健師が共に参加し,保健師経験に応じた重層的な質問でアセスメントを促す事例検討の企画の有効性が示唆された.