抄録
本研究の目的は,熟練保健師による活動事例を基に,事業・施策展開を要する課題を明らかにするための保健師の判断内容を明確化することであり,判断の構造化を試みる.研究対象は,近畿2府県の保健所に勤務し,事業・施策展開を要する課題の判断能力に優れていると複数の地域看護学有識者や保健師の上司から推薦された保健師14名である.データ収集は,半構成質問紙を用いた個別面接調査により行った.得られたデータは逐語録におこし,保健師の判断内容について質的記述的に分析した.結果,保健師の判断内容として,【課題の存在を認識する】【課題の真髄を探る】【対象の課題解決力を見積もる】【サービス提供側の課題解決力を見積もる】【活動の結果を予測する】【活動が対象に及ぼす影響を予測する】などの19のカテゴリーが得られた.これらのカテゴリーは3つの局面に分類され,保健師は,活動の中で3局面にわたる判断を重層的に繰り返しながら,事業・施策展開を要する課題を明確化していた.また,保健師の判断には,【対象本位のスタンス】【地域拠点の活動志向】【行政保健師としての使命観】といった前提があり,判断の着目点,考慮点,意図などに影響していた.今回明らかになったような保健師の判断は,事業化・施策化の役割を求められている保健師が,看護専門職としての独自性・専門性をもってその役割を担っていくうえで,重要であると考える.