目的:在宅療養が困難な状況下での高齢者および家族に対して,どのような訪問看護・介護介入(以下,介入と称す)がセルフケア能力を向上させ,在宅療養の継続を可能にするかを明らかにするために,療養困難な状況を構成する要素と介入について検討した.対象および方法:対象は,平成13年〜15年度のK県訪問看護職研究会で報告された,在宅療養が困難な状況下で療養を続けている8事例の高齢者・家族と,訪問看護師およびホームヘルパー(以下,ケア提供者と称す)である.方法は,報告された在宅療養を困難にしている状況に関する記述,療養者・家族のセルフケア能力の向上と介入に関する記述を抽出し,質的に分析した.結果および考察:在宅療養が困難な状況を構成する要素には【精神機能の低下】【家族関係の悪化】【生活リズムの乱れ】【困難な援助関係形成】【もろい生活基盤】【コントロールされない病状】が抽出された.また,在宅療養が困難な状況下で,結果としてセルフケア能力を向上させた介入には[信頼を築く][感情の表出][活動性を高める][調整][傾聴][共感][受容][専心][安心・安全の保証][まき込まれる][関わりつづける][臨床判断][かけに出る][距離化を図る][承認][環境整備]が抽出された.そして,8事例中7事例に,セルフケア能力の向上が認められ,向上が認められなかった要因の一つに,当事者以外の家族関係の調整不足が示唆された.本研究で認められたセルフケア能力の向上の多くは,数値で測定されるアウトカム改善の視点からは認識されにくく,事例検討によるセルフケア能力の向上と介入方法の詳細な分析が,在宅療養が困難な状況下での援助方法に意義をもっと考えられた.