抄録
壮年期の在宅脳血管障害患者は,身体機能は比較的良好だが,活動的な生活ではなく生活の満足度も高くないと報告されている.本研究の目的は,壮年期にある脳血管障害患者の在宅生活に関わる願望を具体的に明らかにし,地域生活を支援するための看護上の示唆を得ることである.質的研究方法を使用し,データは40〜50代の10名を対象とした.日々の思いを聞く中から,本人ができればこうしたいと思っていることを聞き出せるようなインタビューを試み,帰納法的に分析を行った.その結果,【良くなりたい】【役に立ちたい】【趣味・得意なことをしたい】【自由に外出したい】【情報がほしい】【サービスへの意見・提言】というカテゴリーが抽出された.本研究の対象者は,ADLがほぼ自立している者が多かったが,次のような看護上の示唆が得られた.(1)願望の内容に共通していたことは,自分も主体的に何かをしていきたいということであった.(2)願望は発症前から好きだったこと,得意なことに関連して話される場合が多かった.(3)願望の内容は個別性が高く,また既存のサービスだけでは対応できない願望もあった.今後は願望の実現に向けて当事者とともに支援示方法を検討していくことが課題と考えられた.