本研究の目的は,在宅神経難病患者へのケアマネジメント過程における保健所保健師の特徴的な役割を明らかにすることである.調査方法は面接であり,都道府県立保健所保健師4名を対象に,受け持ち神経難病患者1例の事例のニーズと支援内容を把握した.分析は面接内容を逐語録に起こし,事例ニーズと支援内容とに分類整理した.さらに事例ニーズと支援内容が岡本らのケアマネジメントの枠組みのどの項目に該当するかを照合した.その結果,保健師の役割の特徴とケアマネジメントの傾向について,以下のことが明らかになった.保健師の特徴的な役割は,(1)病気の専門的知識に基づいた事例のニーズの把握と支援,(2)関係者への疾患理解のための教育的支援,(3)公的サービスの導入による問題解決,(4)家族のQOL向上を目指した家族支援,(5)連絡会議による関係者間の連携・調整の推進であった.保健師4名が共通して捉えていた事例のニーズは,適正な保健医療領域では,悪化予防・生命の危機への対応,本人・家族の在宅療養領域では,漸次的機能消失・予後の予測に伴う本人の苦悩への対応,病気の受容・生活との折り合い,家族の負担への支援の項目であった.さらに,保健師が実施したケアマネジメント過程は「利用者支持とニーズ分析」「チームによる協議と計画」「適正な連結とフォローアップ」であり,モニタリングと評価・フィードバックの過程は実施していない傾向がみられた.